延長されたガソリン補助金は「拡充」か

資源エネルギー庁の発表では、9月4日時点のレギュラーガソリンの店頭価格(全国平均)は、前の週に比べ0.9円高い1リットル186.5円で、過去最高値を更新しました。

夏休みの最中のガソリン価格の高騰への不満の高まりを受けて、岸田政権は縮小して来たガソリン補助金を年末まで拡充・延長することを決定し、早速7日から実施に移しました。

政府は、ガソリン価格は9月中に180円程度まで下がり、10月末には175円程度にまで下がると見ています。

しかし、それでも175円です。これまで目安にしてきた1リットル168円と比べると7円も高い水準です。

補助を縮小して来た直前と比べて「拡充」と呼んでいるだけで、それ以前と比べた実態は、補助金「縮小」なのです。

8日発表の毎月勤労統計によれば、月の実質賃金は前年同月比で2.5%の減少と、16か月連続のマイナスで、しかも減少幅は6月より拡大しました。

ガソリンや灯油価格が上昇すれば、めざしている「実質賃金プラス」の世界はさらに遠のきます。

ガソリン税減税も含めた経済論戦を

岸田政権は、お得意の、「とりあえず」「延長」という選択をしました。

「いずれ価格が落ち着く」までという「激変緩和」のための補助金が2年も続くことになりました。

しかし、原油高はもはや一時的ではなく、しばらく続くものと見るべきでしょう。

では、年明けからはどうするのか。今からオープンな議論をして国民の合意を形成すべきでしょう。

そして、その際には、ガソリン税の減税という本来の姿についても、当然、議論されるべきです。

時の政権のハラ次第で、168円とか175円とか、ガソリン価格の水準が決まるのは、いくら何でもヘンな話です。

物価高対策の必要性と、財政・金融政策との整合性、国民負担のあり方などについて、堂々とした論戦が交わされるべき時です。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)