◆拉致問題を報じた共同通信の若い記者
そんなことを考えるのにちょうどいい材料が、先週配信された共同通信の記事にありました。北朝鮮の拉致被害者5人が帰国して21年になります。共同通信の湯山由佳さんが曽我ひとみさんにインタビューし、8月25日~26日に配信されています。
「若い人にこそ知ってもらいたい拉致問題」
(前編)夜の路上で、いきなり頭から南京袋をかぶせられた 北朝鮮に連れ去られた曽我ひとみさん、帰国までの24年
(後編)「ソガ・ヒトミ」その存在に驚愕した日本政府 曽我さんは自責の念を抱えて帰国 した
「共同通信を含めた報道各社の『帰国20年』の特集は、過去の記事との重複を避けるため、主にここ数年の政府交渉の推移と、被害者の状況に焦点が当てられる内容が多い。曽我さんが何度も繰り返していた『拉致問題を知らない、若い人たちに伝える』という願いに、メディアは応えられているのだろうか」と、書いています。7500字余りの長い読みものです。
曽我さんが幼少期、どんな生活をしていたか。拉致当日はどんな様子だったのか。北朝鮮での生活はどんなだったのか。帰国当時を知らない若い記者が、丁寧に書いています。
◆「20代の私には、全てが新鮮だった」
「非常にいいな」と思ったのは、「取材後記」です。
“取材し、原稿を書く中で上司とは何度もぶつかった。「これは知ってもらう必要がある話だ」と思っても、デスクから「みんな知っている話だから、他の話を書いたらどうか」という指摘が入る。意見が食い違う原因は、世代にあるのかもしれない。20代の私には、曽我さんが語る全てが新鮮だった。(中略)共通認識として拉致問題を知る世代とその下の世代とでは、拉致問題への認識が異なる。若者の大半は「詳しく知らないけれど、ずっと解決していない問題」と遠く感じているのではないか。私が書いた記事も、共通認識を持っている人向けのものになっているのでは、と自問自答を繰り返した。”
この「共通認識を持っている人向けになっていないか」という問いは、私たちメディアとって大きな提起だと思いました。例えば、特攻隊のニュースを取り上げた時、「特攻隊とは何か」を知らない世代がいるかもしれない、ということを実はあまり考えていないんです。10~20代の人たちがニュースに触れた時に、すっと入ってくる内容になっているかどうか。ニュースを取り扱う立場としては、非常に大事な話です。
若い湯山記者が曽我さんの話を聞き、「自分が驚いた話は多くの人が驚く話だ」と、上司と何度もぶつかったという記述。「このデスクのようなことを私も言ってしまうんじゃないか」という気がしました。「もっとこう書いた方が若い人に伝わるのではないか」という若い記者の意思や感情を大事にした方がいいんじゃないかと、この記事を読んで思ったのです。














