8月19日に開幕した世界陸上ブダペスト大会。最終日(8月27日)の男子マラソン代表の西山和弥(24、トヨタ自動車)が7月にインタビューに応じてくれた。2月の大阪マラソンで、初マラソン日本最高(2時間06分45秒)で日本人トップを占めた男子マラソン界のホープ。気負わずに臨んだ初マラソンと、代表として臨む世界陸上の、心境やトレーニングの違いを明かしてくれた。東京五輪代表だった服部勇馬(29)、昨年の世界陸上オレゴン代表だった西山雄介(28)らトヨタ自動車の先輩たちにも言及。ブダペストのコースや暑さ対策も考えているという。
初マラソン前とは40km走のタイム設定を変更
――2回目のマラソンが世界陸上になります。初マラソンのときと心理面で違いはありますか。
西山:
1回目は初マラソンということで、あまり気負わずに走ることができたのですが、2回目は代表として臨むマラソンということで、責任感も芽生えていて、しっかり準備をしていかないといけないですし、代表として出るからには勝負をしていかないといけない。そういったところで1回目とはまた違った気持ちで練習に臨んでいます。
――脚作りの代表的なメニューである40km走は、初マラソン前は何本くらい行ったのですか。
西山:
10月に山梨県西湖で1本、12月に千葉県の白子で1本、1月に奄美大島の実業団連合合宿で3本行いました。9月に英国でハーフマラソンに出たので、夏は30kmにしました。夏の前半はアレルギー症状が出てしまって、夏の40km走が1本もできなかったのですが、全部で5~6本を考えていたので想定していた本数ができました。
――今回は6~7月に42km走や45km走も行っていると聞きました。
西山:
初マラソン前も一度、42kmを行っています。その流れで今回も少し長めに行いたかったのと、夏のマラソンなのでじっくり脚を作っていくイメージですね。なのでペースは、冬のマラソンより遅く走っています。冬は後半(5kmのペースが)16分台まで上げて、2時間15分、14分で何本か行いました。今回は夏ということで17分半ペースで、2時間20分を切るくらい。冬より5分程度抑えて走っています。
――タイム以外の違いも何かありますか。
西山:
今回はずっと高地で練習してきましたが、暑さは冬と比べたらまったく違います。疲労感が冬よりも大きいので、水分の取り方や栄養の摂り方は気を配っています。
初マラソンではしなかった高地トレーニングに取り組む理由とは?
――7月までは長野県の菅平で練習をすることが多かったと聞いています。菅平の標高は1250~1650mで高地トレーニングになりますが、初マラソン前も高地トレーニングは行っていましたか。
西山:
西湖の標高が約900mですから、高地トレーニングには取り組んでいませんでした。今回はずっと菅平で練習してきましたし、7月後半からは米国パークシティ(標高2100m~)で練習します。夏の練習は身体的なところや内蔵的なところで負荷が大きいので、走行距離を落とさないといけない部分があると思っています。走行距離を落としても心肺的な負荷をかけられるのが高地です。標高の高いところでジョグの量を少し落としたり、ペースもゆっくりめに走ったりしています。
――10月のMGCも意識していますか。
西山:
もちろん世界陸上に全力を尽くすのですが、MGCも全力で走ることを考えたとき、高地トレーニングが良いと考えました。心肺的な負荷がかなりかかるので、冬のマラソン練習と同じくらいの負荷をかけつつ、脚はできるだけ残すことができます。パークシティもそうだと聞いていますが、菅平はアップダウンのあるコースが多いので、走行距離が落ちても脚作り、脚筋力の強化はしっかりできる場所です。
――以前はトヨタ自動車の拠点近くの蔵王山(愛知県田原市)の練習が苦手で、取り組む意識も低かったと話していました。
西山:
今は上り下りの練習の目的を理解して、動きの課題も意識して走っています。菅平の宿舎が坂の上の方にあるので、ジョグで降りていったら必ず、帰りは上って来ないといけないんです。歩くだけでも腰が落ちていたら前に歩けない。ジョグで上るときも、正しい動きで走らないといけないので、自然と自分に適したフォームに修正ができます。