【解説 木田修作記者】
原発処理水の海洋放出開始日決定について、まず指摘しなくてはならないのが、「関係者の理解なしにいかなる放出もしない」という約束です。この文言を素直に読めば、約束をした当事者である漁業者が反対をしている以上「放出はしない」と約束していると読めますし、そう思った方も多いのではないでしょうか。
政府は約束について「順守する」とする一方で、関係者とは誰か、理解とは何を指すのか明言を避けてきました。
西村大臣は21日にようやく「理解が進んできた」と言及しましたが、この発言についても疑問を持つ関係者は少なくありません。
また、この段階になってもはっきり「理解された」とは言えない状況だということを政府自身が認めたとも言えます。
こうした中で、30年以上にも及ぶ放出を決めたというのは「見切り発車」と言わざるを得ませんし、政府が自ら交わした約束を空文化させたと言えます。
方針を決めた際、当時の菅総理は「懸念を払しょくし説明を尽くしていく」と話していました。
ただ、振り返ってみると、設備面の準備を先行させたこともあり、信頼関係のもとに話し合いを進めるには、最も困難な状況となりました。
その結果、漁業者にしてみれば懸念の「払しょく」にはほど遠い状況で、説明も尽くされていないと多くの人が感じています。
今後、廃炉作業が進む中で、さらにシビアな放射性廃棄物の問題や地元の理解や合意が必要な課題も出てくることが予想されます。
こうした進め方が繰り返されれば、そのたびに地元が疲弊し復興が遠のきはしないかと思っています。
廃炉を何のために進めるのか。廃炉のために、復興が妨げられることにならないか。分岐点にあると思います。