赤みがうっすらと出たトマトを、夫はおいしそうに食べていた

箱石シツイさん
「(絵を見ながら)あらぁ…よく似ています」

特に、夫の二郎さんが家を出て戦地に向かうまでの3日間は、今もはっきり覚えているといいます。

箱石シツイさん
「召集令状が来て、3日で家を出発。皆さんが見送りにきてくださったの。なかなか夫が2階から降りてこないから、上がっていったら、顔中涙だらけ。2人の子どもを両方に抱いて。私が『皆さん待っていますから』って言ったら、夫は『うんうん』なんて言いながらも、なかなか子どもを手放せないでいましたけど。

本当にちょうどこう(絵のとおり)だったものね。涙がすーっとこぼれて、鼻からも伝わって」

「夫は東部38部隊に入隊して、入隊した翌日に面会に行ったら、お水も全然飲ませてもらえないんですって。喉がカラカラで声が出ないってしゃがれた声で言うので、喉がうるおうように。

わたしが農家をずっと歩いて、やっと6軒目にトマトを見つけた。いくらか赤みがうっすらと出たところがあるトマト。『ゆずっていただけますか』って言ったら、農家が『いいですよ』って言って、とってくださったの」

「(絵を見ながら)そうそう、ちょうどこのくらいの赤み。だから食べてもおいしくないでしょうけどね、それでもおいしそうに食べていましたね。『やっと喉がうるおってよくなった』って」

「最後に「子どもの顔を一目見たかったな」と言われて、胸がいっぱい。あの時はつらかったですね。『お金は全部使ってしまってもいいから、子どもを気を付けてできるだけ面倒を見てもらいたい』って。そして3日目に、満州に旅立った」