校歌・校章に込められたエール

校歌は「寒さに磨かれる星よ あの煌(きら)めき…」という北国らしい歌詞で始まります。札幌出身のシンガーソングライター、半﨑美子(はんざき・よしこ)さんが、札幌市から依頼を受けて作りました。タイトルを「私の物語」とした理由に、強い思いを込めています。

「お話をいただいたのは開校の前の年でコロナ禍の最中だったんです。当時、夜間中学校のことはまったく知らなかったので、まず生徒さんや先生に会ってみたいと思いました。そうしたら居ても立ってもいられなくなって、少し調べて、東京の荒川第九中学校に行ってみたんです。でも何の連絡もしてなかったので、ただ校門の前をうろうろして…。その後、改めて連絡してお話を聞きました。お一人お一人の表情や学校の空気感は、思っていたより明るいんです。でもそれぞれの方がそこにたどり着くまでのことを知ると、それを言葉にできるまでにはどれほどの試練があったかと思い至って、胸がいっぱいになりました。私は器とかフィルターに過ぎないんです。大きな声は私が歌にしなくてもどこかに届くでしょう?でも小さなそれぞれの『私の声』を届けたいと思いました。夜空に輝く星は、実際には燃えているんですよね。その燃える夜に学校へ通う人たちがいるんです」。

校章の左側の白い部分は、地球の裏側から漏れ出た昼の光を表しています。そして夜空を星と共に照らすもう一つの天体=月も表現しています。
時に何かの影になっても、誰もが星の如く輝く存在である。このことを私は本連載の取材で、「星のまなびや」に深く教えられることになります。
【連載記事のラインナップ】
●プロローグ 開校2年目の夏…札幌市立星友館(せいゆうかん)中学校
●エピソード(1)モロッコと清龍~異国で生まれ育ったある日本人の場合 その1「思い出したくもない過去」
●エピソード(2)モロッコと清龍~異国で生まれ育ったある日本人の場合 その2「奇跡の来日」
●エピソード(3)農作業と入院~少女時代を取り戻す82歳と72歳の青春
●エピソード(4)同級生の前にさらされて…不登校経験者・Y(19歳)
●エピソード(5)「虐待で育ったから…」父子で通う同級生親子
●エピソード(6)3時起床23時就寝~もっと勉強したい56歳
●エピソード(7)モロッコと清龍~異国で生まれ育ったある日本人の場合 その3「再びホームレスと…」
*注1)北海道には公立の夜間中学校とは別に、元教員らのボランティアが運営する「札幌遠友塾」など民間の夜間中学(自主夜間中学)が3校あります。これらの中学は、学校としての認可を受けていないため、中学校の卒業資格を得ることはできませんが、週1回の緩やかなスケジュールで、既に中学校を卒業してゆっくり学び直しをする人や、日本語を習得したい外国人らが学ぶ場として1990年から存続しています。札幌市立星友館中学校は、札幌遠友塾の実績を元に、週5日制の公立中学校として開設されました。
*注2)東京都荒川区立第九中学校は1957(昭和32)年に夜間学級を開設し、全国の夜間中学校のモデル校となっている中学校です。映画「学校(監督・脚本:山田洋次)」の舞台にもなりました。

*注3)札幌市立星友館中学校は、入学を随時受け付けています。9月から12月までの間に受け付けの場合は来年4月入学となり、来年1月から8月までの間に受け付けの場合は来年5月から10月までの間の入学となります。詳細は同校へお問い合わせください。

*注4)札幌市立星友館中学校・校歌「私の物語」 作詞作曲:半﨑美子/編曲:
蔦谷好位置(同校ホームページより=同ページでは半﨑美子さんの歌唱を
聴くことができます)
1. 寒(さむ)さに磨(みが)かれる星(ほし)よ あの煌(きら)めき
一(いち)途(ず)に励(はげ)み 燃(も)え立(た)つ希(き)望(ぼう)の姿(すがた)
やっとめぐり逢(あ)えた友(とも)よ あの喜(よろこ)び
迷(まよ)いながら 見(み)つけた遙(はる)か故郷(ふるさと)
いま生(い)きよう 私(わたし)の物(もの)語(がたり)を
さぁ描(えが)こう 自(じ)分(ぶん)のページを
2. 雪(ゆき)の中(なか)で芽吹(めぶ)く種(たね)よ その命(いのち)は
たゆまず明日(あす)を 夢(ゆめ)見(み)た 未(み)来(らい)の光(ひかり)
時(とき)を分(わ)かち合(あ)える友(とも)よ その涙(なみだ)は
折(お)れずに挑(いど)み続(つづ)けた 確(たし)かな証(あかし)
いま拓(ひら)こう あなたと自(じ)由(ゆう)な道(みち)を
さぁ鳴(な)らそう はじまりの鐘(かね)を
3. 再(ふたた)び開(ひら)かれる扉(とびら) この学(まな)び舎(や)
世(せ)代(だい)を越(こ)え 海(うみ)を越(こ)え 結(むす)んだ絆(きずな)
学(まな)びの灯(ひ)は いつの時(と)代(き)も この心(こころ)を
ありのままにうつした 輝(かがや)く軌(き)跡(せき)
いま繋(つな)ごう 新(あら)たな物(もの)語(がたり)を
さぁ歩(あゆ)もう 終(お)わりなき旅(たび)を
果(は)てなき学(まな)びを
◇文: HBC・油谷弘洋