きっかけは海底の134mの膨らみ
常陸丸が見つかったのは、その福岡県玄界灘、世界遺産沖ノ島付近の海域。漁場の関係により詳しい場所は言えない。BS-TBSの特別番組「幻の海底遺産を探せ!~水中ドローンで大捜索~」の取材班が、調査会社に依頼。海底をソナー調べたところ、長さ134mの巨大なふくらみを見つけ、今年5月特別な許可を得て水中ドローンで捜索を始めたのだ。
海底には、常陸丸を象徴するマストのようなものや、排気口と考えられる筒状のものなど数々の特徴が確認された。この特徴や陸軍の資料などを照らし合わせることで、この船があの「常陸丸」だと判明した。

遺跡かな?と思ったら、それはおそらく遺跡なんです。
実際に発見した現場にいた水中考古学者の佐々木ランディ博士にインタビューをした。
上村アナ
「BS-TBSとTBS的にはこれはスクープで大発見と思っているんですが、佐々木さん的には今回の発見はどのようなインパクトがありますか」

佐々木ランディ博士
「何かがあるぞっていうようなものを、歴史事実を結びつけてこれだっていうことを実証するということができた。そういうようなインパクトが一番大きいかなと思います。船体で思ってたよりも劣化が進んでいなかったなっていう印象を受けましたね。もうちょっとボロボロなのかなと思ったら割とくっきりと、この船体が残っていたのは少し驚きがありましたね。あと、どちらかと言えば悲劇の船であるということなので、それを考えると、結構遺族の方とか歴史を学んできた方々にとっては、ものすごく大きな発見に感じるんじゃないかなというふうに思います」

上村アナ
「水中考古学を通じてこれから佐々木さんの展望ですとか、こういうことをしていきたいということがあったら教えてください」
佐々木ランディ博士
「展望ですね、そうですね。やっぱり私の一番の願いっていうのは、本当にたくさんの人に水中文化遺産っていうものが存在しているんだっていうことを知ってほしいっていうのが一番ですね。特に漁師さんですとか、海と関わりを持ってる人っていうのは実は、水中遺跡かもしれないものをたくさん見てきている可能性が高いです。ですので、その自治体の方々とか海と関わりのある方、工事開発関係者の人も、「これなんか、遺跡じゃないのかな」と思ったらですね。もうそう思った瞬間、おそらくそれ実は遺跡なんです。誰かが絶対関心を持ってるものなので、そこは迷わず自治体の方々と相談をしたり、自分が発見者になれる可能性がありますし、おそらく日本全国に本当は遺跡を発見した方っていうのが、たくさんいらっしゃると思うんですけど、自分でその価値に気がついていないので、やっぱり多くの人に知ってもらって、発見の喜びっていうものをシェアしてもらって、我々はそれに意義を与える仕事を淡々と続けていければいいのかなというふうに思っています」

佐々木ランディ博士によれば水中の遺跡は登録されていないものを含めるとおよそ600件あるが、実際にはその何十倍もの“遺産”が発見されずにまだ、海の中で眠っているのだという。
(BS-TBS「幻の海底遺産を探せ!~水中ドローンで大捜索」 8月13日19時放送)