再現性が今の山西の強さ「後半10kmに色々なことを出せる」
8月1日に取材に応じた山西の表情や受け答えには、落ち着きが感じられた。強さの自己分析を求められ、次のように答えていた。
「ここという1つの強みを高めていくより、そういう部分も持った上で他の部分も合わせて、トータルでどう高めていくかをテーマにしてきました。そういう意味では再現性、安定感という表現になるのかな、と思います」
勝ちパターンは1つではなく、いくつも持つことで、結果的にどんなレースでも強さを発揮する。山西の言う安定性は多くの引き出しを持つことだ。「ブダペストで勝ちきるためのプランは?」という質問には「やはり後半ですよね」と答えた。
「前半は(1kmあたり)4分ちょっとのペースになると思いますが、後半のペースを誰が握っていくのか、その中で自分がどういう立ち回りをしていくか。後半の作り方に今年1年やってきたことであるとか、これまでの経験であるとか、色々なことを出せるのかな、と思います。自分の想定を超えた、新しい何かが見えたらいいな、とも思います」
山西は20kmよりも長い距離の種目に取り組む経験もした。昨年10月に、自身初めて35km競歩に出場。2時間26分18秒で、ブダペスト大会35km競歩代表の丸尾知司(31、愛知製鋼)に勝っている。
今年は5月のポルトガルの20km競歩が唯一のレース出場。前回優勝者枠でブダペスト大会出場権があったので、国内の選考レースに出ないでじっくり調整した。例年よりレース仕様への仕上げが後れていたこともあり、3位と敗れてしまった。詳細は後編で言及するが、そのレースで警告を2枚出されたのは山西らしくなかった。だが、そういった回り道のような経験も、今の山西は自身の力とすることができる。
「(過去2大会と)心境は特に大きな変化はないと思っています。自分がやって来たこと、積み重ねてきたものがあるので、その意味では違うと言えば違うんですけど、3連覇目だから何かがあるわけでも、実績で勝てるわけでもありません。その意味では本当に、何も変わりなくやっていけばいいかなと思います。ただ、レースに対する作り方であるとか、深みみたいなものはもちろん出ると思うので、そこはレースの中に込められたらな、と思います」
それが3連覇を目指す山西の歩きにどう現れるか。山西のレース展開や表情に注目することで、何かが伝わってくるだろう。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)