◆メディアとエンタメ業界が性暴力を不問に
もうひとつ、人権理事会が指摘したとおり、これはジャニーズ事務所だけではなく、政府そしてメディアの責任である、つまりこの国全体の問題であるということです。
メディア、とりわけ民間放送は、スポンサーありきで動いたり、エンタメ業界と協働して、コンテンツを作ったりしています。結果的に、メディアとエンタメ業界が一緒になって「性暴力を不問にする」という文化を守ってきたのです。
◆60年間ずっと口に出せなかった
8月5日、TBSテレビ『報道特集』で、元コンサルタントの松崎基泰さん(79歳)がジャニー喜多川氏に性被害を受けたと告白していました。当時小学生、つまり60年前のことをずっと口に出せなかったと。
1950年代の日本には「男の子はそういうことを口にするものではない」という雰囲気がありました。(松崎さんが性被害を60年間告白できなかったことは)そこから透けて見える「男はこうあるべし」とか、もっと言えば家父長制などが当時の背景としてあったのです。
被害者たちが口をつぐんできたのは、その当時の空気があったことが理由のひとつでしょう。日本が抱えてきた宿痾、あるいは膿だと思います。このタイミングでそれを出し切るきっかけにできたらと思います。
◆人権の問題、法整備を
今回のジャニーズ性加害問題は(英BBCの番組や国連人権理事会という)「外圧頼み」ということになっていますが、そうでもしなければ動かなかったということを、私たちは強く自覚すべきだと思います。子供の性被害に対して、これまであまりに目配りが足りなかったのではないでしょうか。
性被害は人権問題です。人権の問題である以上は、やはり法律の整備がないと、抜本的には変わっていかないと思います。いま、児童虐待防止法が時代にフィットしているのかどうか、論議を呼んでいます。なぜならこの法律が、(現行法では虐待を保護者からの行為と規定しており)そもそも「第三者による加害」を考慮していないからです。
性被害は人間の心に関わります。ゆえに「それは人によって考え方が違う」みたいにもなりかねません。だからこそ、共通の指針として実効性のある法律の整備が求められます。
メディアと法律、この2つの側面から、解決に向かう歩みを止めないことです。














