■総理が絶対に譲れなかった言葉は・・・


今回、岸田総理がこだわったのは、「財政健全化の旗を下ろさない」ことを示す「骨太の方針2021に基づく」という表現でした。この言葉があることで、防衛費を含む歳出の抑制につながりかねないと警戒した安倍元総理らが削除を求めましたが、最終的に岸田総理が「これだけは譲れない」と押し返したのです。

ただ、その直後に「重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない」との文言が加えられていて、結局、最後の最後まで、積極財政を唱える「安倍カラー」が色濃く出た今年の骨太方針となりました。

ある経済官庁の幹部は・・・
「これだけ骨太がもめたことは無いのではないか? 中国の脅威が高まり、ロシアによるウクライナ侵略、自民党内に2つの財政本部が立ち上がり、論点が顕在化してしまった」
「岸田総理には、もう少し嫌われる勇気を持って『自らの方針』を主張して欲しい」
と述べています。

■どこまで本気?少子化問題


骨太に記載がないわけではないのですが、個人的には「少子化」に対する危機感が乏しい印象を受けました。

1人の女性が生涯で出産する子どもの数を示す「合計特殊出生率」は人口を維持するためには「2.07」必要と言われていますが、6年連続で減少しています。

去年は「1.30」にとどまっていて、テスラのCEO、イーロン・マスク氏にまでツイッターで「日本はいずれ消滅するだろう」と指摘される状況にも関わらず・・・です。

コロナに伴う行動制限などの影響で、この2年間でおよそ11万組の結婚が失われたとの推計もあり、この先さらに少子化が進む恐れもあります。

国立社会保障・人口問題研究所の統計によりますと、日本の家族関係社会支出は2018年度の時点でGDP比の1.65%にすぎません。
国によって、国民負担率などが異なるため単純に比較はできませんが
フランス(2.93%)、イギリス(3.19%)、スウェーデン(3.42%)などと比べると、かなり低い数字となっています。

今回、防衛力の強化については「5年以内」と目標期限が設定されましたが、個人的には少子化対策も安全保障と同じくらい速やかに対策を講じないといけない課題で、少子化対策で一定の成果をあげているフランスなどと同等のGDP比3%程度の予算が必要だと思います。

■希望はある

最後に前向きな話を。
社会課題の解決と経済成長の二兎を追うため、(骨太の方針通り)人や科学技術、スタートアップやGX・DXに投資が実際に進むのであれば、これからの時代を切り開こうとする若い世代にとっては希望を感じる「骨太」なのではないでしょうか?
また、大企業に男女間の賃金格差の開示を義務付けたり、孤独孤立対策に官民連携で取り組むなど「誰一人取り残さない」という謙虚な姿勢に、「岸田カラー」を感じました。
参院選の後は、年末の予算編成にむけて「財源」を含む議論が行われます。赤字国債を発行するのか、増税など国民負担はどうなるのか、曖昧な、その場しのぎの中身では国民の理解を得ることは出来ません。