■「愛しかった」こころは男性、でもからだの中で育んだ命


2021年12月。エコー写真を手に、今しかないこの瞬間を写真におさめるきみちゃんとちかさん。きみちゃんの出産予定日までは残り1か月だ。

ーー2人で過ごすクリスマスは最後ですね

ちかさん
「そうですね。次は3人。にぎやかになるからいいね」

しかし…赤ちゃんが産声をあげることはなかった。健診で心臓が止まっていることがわかった。2021年12月28日、きみちゃんは赤ちゃんを死産した。

赤ちゃんの名前は「羅希」に決めていた。

ちかさん
「羅針盤の“羅”ですね。希望に導けるようになってほしいなと」

死産の原因は不明だという。2人が羅希ちゃんに宛てた手紙には…

きみちゃん
「僕たちの間にきてくれてありがとう。産まれてくるのをたくさんの人たちが待っていたんだよ。また天国で会おうね、忘れないよありがとう」

きみちゃんはこころは男性であっても、自分のからだの中で命を育んだことに大きな喜びがあったと語る。

きみちゃん
「愛しかったです。自分を大きく変えてくれた存在」

きみちゃんはからだを男性に近づける治療を再開するつもりはない。ちかさんとの子どもを産み、育てていきたいからだ。

きみちゃん
「もし子どもが産まれたら、(羅希ちゃんが)いたんだということをしっかり伝えて、存在を絶やさないようにしていきたいなと思います。子どもはもちたいです、もちろん。でも常に自分は男性だと思っているから、中途半端ってやっぱり言われることが多いけど…プラスに考えればいいとこどりと言えばいいし」

これまでの性別の枠組みに捉われず、自分らしく生きようとする人たち。

性別は、誰が決めるのか。

(「報道特集」2022年6月4日放送より)