長期資産形成を目指す人は「夏枯れ相場」は気にしないで
――日本の輸入物価指数のグラフを見ると、原油価格などの低下で契約通貨ベースの輸入物価は下落基調です。ただ、円ベースでは横ばいになっている。この理由は?
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
犯人は円安です。ドル建てもしくはユーロ建ての値段というのは、もう1年ぐらい前からずっと下がってきているのです。ところが円ベースだと、直近2か月ぐらいほぼ横ばいかむしろ少し上がっています。日本が海外からエネルギーや食料品などを買うときは円ベースですから、これが我々の生活、消費者物価に跳ね返ってくるわけです。

――これまで続いた日本の株高はどうなっていくのか。植田総裁になった4月以降の株価は一時3万4000円近くまで達しましたが、ここ1か月は3万2000円台と足踏み状態で、28日は一時800円下げる場面もありました。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
28日のお昼12時半ぐらいに日銀が発表して、直後どんと下がったのですが、引けにかけてV字回復して、終わってみれば130円安ぐらい。マーケットの反応は限定的だったということだと思います。
――今後をどう予想しますか。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
国内に関しては、日銀は政策修正したばかりなので普通に考えれば年内はもう何もしないだろうと。結局のところアメリカの景気、経済がどうなるかというところがカギだと思います。アメリカの景気は今非常に強いのです。景気が強いのはいいことなのですが、こういう状態もしくはもう少し景気が強くなるような状態が続いたら、インフレが再燃してしまう。そうなるとFRBは「もう1回利上げしなければ」となるかもしれない。実際にやるかどうかはともかく、マーケットは萎縮して株価が下がることが想定されます。逆に、利上げの効果が出てきて景気減速になれば、日本にとってはアメリカ株下落と円高というダブルパンチになります。その場合、日経平均は一旦3万円割れぐらいまでは下がるだろうというのが、今現在私がイメージしているメインシナリオです。
――アメリカはインフレ率は落ち着いてきたものの労働力はかなり余裕があったり、何か矛盾している。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
失業率もまだ3%台半ばで完全雇用に近い状態です。それに加えてここ最近ようやく労働参加率といって、働ける人のうち働こうと思う人の割合が増えてきています。求人も多いですし、雇用環境は非常にいいです。労働参加率上がってくるということは、賃金が伸びなくなってくるかもしれない。それはそれでインフレを抑えるので、いい話なのです。そういう絶妙な状態がもうあと半年ぐらい続く可能性ももちろんあります。でも多分それはできないので、どこかで1回3万円割れ、少なくとも3万1000円ぐらいまでは下がるのだろうなと。
――今の株価はすごくいいバランスでキープされている?
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
そうです。特にアメリカ株は。日本株もアメリカ株に引っ張られる形で3万2000円、3000円を維持しているという形です。

――今日の格言「夏枯れ相場」はどういう意味でしょう。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
夏休み、特にお盆の期間は取引参加者が少なくなって、相場の動きが鈍くなって値動きが小さめになるということです。一方で、参加者が少ないということは取引が少ないので、まとまった注文が入るとそれで株価が大きく上下するということも起きやすいのです。今はスマホ一つで売買できますから、最近はどちらかというとボラティリティ(変動幅)が高いこともあります。そうなるとちょっとびびる場面があるかもしれませんが、この「投資のキホン」はあくまで長期の資産形成がテーマですから、皆さんはお盆期間中、少し針が振れるようなことがあっても気にしないで、ゆっくりと休暇を楽しんでいただきたいと思います。