◆「課徴金減免」(リー二エンシー)とは


神戸:課徴金は、独禁法違反の場合に企業などに対して「お金を支払いなさい」と公取委が命じるものです。「課徴金減免」制度というのは、カルテルなどが行われた場合に、企業が自主的に告白して実態を明らかにした場合、最初に言った企業には課徴金を全額免除し、2位以下にはだんだんパーセンテージは低くなっていきますけど、課徴金を減免する制度です。九州電力がその申請をしていた、ということですね。
中里:その通りです。最近制度が変わり、公正取引委員会の調査の最中にも、協力をするとさらに減額の率が上がっていく仕組みになっています。今回は、基礎の10%に加えて満額の20%、合わせて30%の減算率が認められています。このことからも、九州電力がかなり積極的に調査に協力していたんじゃないか、と私は見ていました。
神戸:なるほど、だから「意外だ」ということですね。


◆行政処分をめぐり法廷での争いに


神戸:九州電力は会見などで、社員や地域に「カルテルをしていたのではないかと疑われてしまうんじゃないか」という意見があって、取締役会全会一致で提訴を決定したということです。今後、どうなっていくのでしょう?
中里:6か月以内に、行政処分の「排除措置命令」と「課徴金納付命令」の取り消しを求める訴訟を、東京地裁に提起することになります。ここから先、かなり長い裁判になるのではないかと思っています。過去に判決まで、3年2か月かかったような事例もあります。今回の場合、九州電力は違反行為が公取の認定とはだいぶ違うものと考えているようですので、訴訟の長期化もあり得ると想像しています。
神戸:長期化してコストもかかるけれど、それを負担してでもやる、と決断をしたということになるわけですね。


◆九電の言い分が「どれだけ認められるか」


中里:もう一つの考慮要素は、判決でどのぐらい事業者側の言い分が認められるのか、ということです。取消訴訟はかなり提起されていますが、この8年間で企業の言い分が実質的に認められたのは課徴金に関するわずか1件のみという状況で、九州電力は中々思い切った判断をしたな、と思っています。
神戸:なるほど。「10月2日までに提訴する」と九州電力は発表しています。まだこれから時間がかかるけれども裁判の場で争うという形になるわけですね。


◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。