「障害者」という属性を理由にした殺人は、ヘイトクライム(憎悪犯罪)です。そういう属性を持っている人は誰でも対象にする、というひどい犯罪です。でも、長男が幼いころは「障害がなければいいな」とずっと思っていた自分もいました(自分の心の中にも差別の心があるのだ、と後から分かるのですが)。事件後はモヤモヤした思いに包まれていました。
◆事件には触れなかったフェイスブックへの投稿
事件から3日後の夜中、東京の部屋で私がフェイスブックに投稿した文章は、事件については一言も触れていません。自分が障害を持つ子を授かってから十数年の間に考えてきたこと、時間の推移とともに変化していった父親としての気持ちを書いた、1000字あまりの文章でした。完全にプライベートな文でしたが、これを書いたことで、僕の記者人生は大きく変わったのです。
https://www.facebook.com/kubonchinoabu67/posts/1226969000669340
ネット上では大変な拡散が始まりました。フェイスブックを今見ると、3612回シェアされていました。「いいね!」は1万4000人以上です。
すぐにTBSテレビや、新聞社、他系列のラジオなどのメディアが全文を紹介するという流れが起きました。
なぜ僕に依頼してきたのかはよく分かりました。メディアは、植松被告の供述を放送しなければいけない。あまりにヘイト(憎悪)が強いので、自分たちが憎悪をまき散らしている状況に陥っていたのです。「カウンターとなる言葉」を求めていたというのがその時のメディア状況で、たまたま僕の文章がそれに当てはまったのでしょう。だから、他系列でも採り上げたのです。
それは、社会も一緒でした。TBSテレビ『NEWS23』が僕の文章を全文朗読した動画は、数日後に気づいたら1万3,000回以上もネットでシェアされていました。「これじゃいけない」と思う人が本当に多かったと思います。
『NEWS23』の動画を見た編集者から本の出版を頼まれて、事件から3か月後に出版したのが「障害を持つ息子へ ~息子よ。そのままで、いい。~」(ブックマン社)です。多分、やまゆり園事件に関して最初に書かれた本だと思います。















