誰もがいずれ訪れる『老い』。内閣府のデータによりますと、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると見込まれています。そして認知症の家族を支える介護者(家族)の負担は大きく、悩みを抱える人も少なくありません。
こうした中、認知症になった母の介護体験をコントにして、当事者たちの居場所づくりを目指すタレントがいます。家族も追い込まれがちな認知症を笑い飛ばそうと去年から始めた新たな活動が、広がりをみせています。
「死にたい」介護経験を「笑い」に 女性タレントが始めた認知症コント

沖縄で高い知名度を誇る女性タレントの喜舎場泉さん。母の初子さんが認知症を患って10年。長い間、自宅で介護してきました。
喜舎場泉さん
「誕生日がわからなくなるし、年齢ももちろんわからなくなる。まさか自分の母親がなるなんて、全然想像もしなかった。すごく受け止めることがきつい、ショックでしたね」
去年、RBCのニュースの特集で、母の認知症と介護の日々を初めて世間に公表。「死にたい」とまで考えた介護体験を、これからは「笑い」に変えたいと、認知症のコントに挑戦する姿は大きな反響を呼びました。
喜舎場泉さん
「認知症を笑いで当事者がやる、笑いに変えて当事者が講演会をするのは、たぶん初だと思うんですよ。それで行政や周りから『ぜひそういう講演会は初めてなのでお願いします』というお声がけが来ます」

あれから半年あまりがたち、泉さんには、放送を見た人から認知症コントを「私の街でもやってほしい」と依頼が相次ぎ、相棒役の『ゆーりきやー』のりきやさんと共に、各地を回るようになりました。
誰もがいつか直面する可能性がある、認知症の問題。関心は高く、毎回、座れない人がでるほど、会場に人があふれています。

喜舎場泉さん
「やはり皆さんに笑いを届けたい、笑ってほしい、同じ時間を皆さんと一緒に共有したい」
6回目となったこの日は、泉さんの地元、与那原町での開催です。客席には、泉さんと母・初子さんのことを、長年見守ってきた地域の人たちの姿もありました。
観客(昔から喜舎場家をよく知る人)
「泉さんも毎日来て、ごはん作ってあげたり、お世話しているのも見てきているから、やっぱり今日は楽しみだなと思って。それとお笑い、笑おうと思って。一番大事よね、ニコニコ笑って帰りたいね。認知症になったから悲しいんじゃなくて、笑って、笑い飛ばすくらいじゃないとね。笑いたい、泉さんとね」
きょうもまた、母の認知症をコントにして、笑いを届けます。

同じ境遇で苦しい思いをしている人たちと笑い合えるような「場所」を作りたい。そんな泉さんの思いは、形になりつつあります。
喜舎場泉さん
「どうしても、いつまでも、しっかりした親が自分の頭の中にいるので、当たってしまうのわかるんです。『何回言いね、ワカイガ カシマサヌ(何回もいうな、分かるよ、うるさいな)』。とってもわかります。これがちょっとした切り替えです。切り替えで受け入れたら毎日の生活がコントのように笑えるようになったんです」