2013年撮影 ウルムチでビールを飲む筆者とアクバル

ウルムチ滞在の最終日、アクバルが地元の店に連れて行ってくれた。定番の羊肉の串焼きとビールを飲み、話は私が昼間民族街で見た武装警察官に及んだ。

その瞬間、彼は店内を見渡すと私の耳元で「どこに私服警察官がいるか分からないから、政治的な話はここではやめてくれ」と強張った顔で話した。北京では見たことのない彼の表情だった。

北京でアクバルは、2009年のウルムチ騒乱以降、中国政府のウイグル族への監視は一層強まっていて、政府批判など政治的な話は誰に密告されるかわからないという疑心暗鬼から、肉親や親友にしかできないということを事あるごとに話してくれた。

しかし、北京ではオープンに話してくれた彼が新疆に来た途端、別人のように緊張する姿を目の当たりにし、ウイグル族のもの言えぬ暮らしの一端を垣間見た気がした。

時は過ぎ、アクバルとウルムチで過ごした夜から10年。
今回私はJNN北京支局のカメラマンとしてウルムチ、カシュガル、ホータンの3か所を取材で訪れ、この間新疆ウイグル自治区の何が変わったのか、自分の目で確かめることになった。(後編に続く)

JNN北京支局カメラマン 室谷陽太