袴田巌さんのやり直し裁判をめぐり検察は7月10日、有罪立証する方針を静岡地方裁判所に伝えたことにより、判決までの長期化は決定的となりました。90歳の姉・ひで子さんは「2、3年なんてこれまでの戦いに比べれば」と話しますが、高齢の2人にとっては重い時間となりそうです。
<男性>
「これ以上、袴田さんを苦しめるな!」
<女性>
「検察側恐ろしい」
袴田事件の弁護団がインターネットで署名を求めたページに寄せられたコメントです。袴田さんの無罪を訴える声は開設から5日で、すでに4万2000を超えています。
世論の声が高まった理由。それは検察が7月10日、再審公判で改めて袴田さんの有罪立証を決めたからです。静岡地検は争う理由についてこう説明しました。
「承服しがたい点がある」
1966年、現在の静岡市で一家4人が殺害された事件で袴田巖さんは逮捕され、死刑が言い渡されましたが、2023年3月、東京高裁が再審=裁判のやり直しを決定しました。再審決定の理由について東京高裁は、犯行着衣とされた「5点の衣類」は、事件後1年2か月も経ってから見つかった割には血痕の赤みが残り、捜査機関によって「ねつ造された可能性が高い」としました。
しかし検察は10日、「『5点の衣類』に付着した血痕に赤みが残ることは不自然ではなく、複数の専門家による鑑定書や調書などで立証する準備がある」とした上で、衣類がねつ造されたことを示す証拠はないと反論しています。
検察が有罪立証に踏み切ったことに、元東京地検特捜部の副部長を務めた若狭勝さんはー。
<元東京地検特捜部 若狭勝弁護士>
「一度起訴した以上は、もう無罪などはあり得ないんだと。ひたすら有罪なんだということで突っ走ることがメンツだとすれば、検察のメンツで動いていたと場合によっては言えるかと。『5点の衣類』についてはねつ造ではなかった、あるいはねつ造とは認められないとする落としどころにもっていくために、戦略的な強い有罪立証をしていると」
過去、死刑事件から再審無罪になったのは4件あります。いずれも検察が有罪を立証したため、1年から2年半の期間がかかっています。袴田さんも無罪の公算は高まっていますが、検察の有罪立証により審理の長期化は決定的と言えます。
<袴田巖さんの姉・ひで子さん>
「まあ57年戦っておりますからね、ここで2年、3年長くなったってどうってことないですよ。頑張っていきます」
一方、弁護団は。
<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>
「皆が袴田さんの無実ということを分かっていて、にもかかわらず長期化をしようとしているのは、検察は人の人生をなんて思っているのか。腹立たしい限り」
弁護団は袴田さんが高齢であることや、精神的に不安定な状況が続く「拘禁反応」の症状があることから、裁判所への出廷を免除するよう求めています。裁判所も袴田さんの出廷は「考えていない」と弁護団の要請を応じるとしています。
<伊豆川洋輔記者>
Q検察が再審公判で、有罪立証をした場合には1年から2年半かかったと。では、検察がもし有罪立証をしなかった場合はどうなっていたんでしょうか。
「近年行われた再審公判では、検察が自ら無罪を主張したケースもあります。こちら2つの事件(足利事件と東京電力女性社員殺害事件)では、再審請求審で別の真犯人の存在が明らかに浮上し、検察側が無罪の求刑や意見書を提出しました。その結果、一番短いもので10日で無罪判決が言い渡されているんです」
Q今後袴田さんの再審に向けた手続きはどのように進められていくのでしょうか?
「再審に向けた裁判所、検察、弁護団による3者協議は、7月19日に4回目を迎え、すでに10月までの日程が決められています。10日に検察が立証の方針を示したことで、再審公判で提出される証拠の範囲や、やり直しの裁判がいつから始まるのか、具体的な調整に入るとみられています。
元東京地検特捜部の若狭勝弁護士は、検察の有罪立証によって新たな証拠を調べたりすることから、判決の言い渡しが年単位で先延ばしになったと話しています。検察の立証方針が明らかになった中、いつ再審公判が始まるのか、さらなる注目が集まります」
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