◆「私と放送局が協力してジェンダーの悩みを発信したい」

平井被告から記者に届いた手紙

手紙の要旨は下記の通りだ。

「反省の一つとして1つだけお願いしたいことがあります。ジェンダーについての番組を制作して私が出演することは可能ですか。私の実体験や感じた思いを私自身の生の声でたくさんの人に伝えたい、他にも私と同じようなジェンダーの悩みを持たれている方々もたくさんいるということを知ってもらいたい。今後ジェンダーについて環境がととのいジェンダーの方々が生きやすい環境になるきっかけを目標として私自身と放送局等が協力して発信していきたい」


文面からLGBTQの人たちを取り巻く環境に強い課題意識があることがうかがえる。反省と謝罪の言葉もあった。一方で、心が肉体的な性と一致しないことによる“生きづらさ”が、どのようにして若い女性に対する“攻撃”につながったのか。「屈折」が生じた詳しい経緯は綴られていなかった。


◆自分と“女性”を投影「女性を見て悲しさと悔しさと嫉妬心が浮かんだ」

着たいと願い続けた振り袖を汚して台無しにした(視聴者提供)


そもそも「性の違和感」が登場するのは審理の初日、被告人質問の時だった。検察側と弁護側の双方が質問を投げかけ、起訴された本人の主張を聞き取る時間だ。

弁護側「犯行はいつ思いつきましたか?」
平井被告「当日の朝に外に出たら振り袖姿の女性を見た。いいなと思ったと同時に悲しさと悔しさと嫉妬心が浮かんだ」

平井英康被告(33)


平井被告は、願ってもそうなれない「女性」に対して“嫉妬心”があったと打ち明けた。それは、自身が20歳の時までさかのぼる。

平井被告「自分が成人式のときに振り袖を着たかった。小学生のころから性の違和感に悩み、二十歳のころも相談できず振り袖を着られず汚そうと思った」