
心も体も女性になりたいけれど、今の自分はそうではない。その悔しさがあったからといって、成人式に参加している若い女性の衣装を台無しにしていいわけがない。裁判長は平井被告のこれまでの「嫉妬」や「悔しさ」などの言い分を文字通り一蹴した。言い渡されたのは、懲役1年2か月の実刑判決だった(求刑は懲役2年)。
被害者は一生に一度の機会を奪われた。それは着物の損害額を弁済されたからといって到底、穴埋めできるものではない。結局、ジェンダーの問題とはまったく別の次元で糾弾されるべき犯行であることは明らかだ。一方で、平井被告が“振り袖”に10年以上もコンプレックスを抱き続け、今に至るまで解消できなかったのも事実だ。その心の中の葛藤もまた社会は無視することはできない。