陸上の田中希実(23、NewBalance)が日本選手権(6月)1500mと5000mで2冠を達成した3日後にケニアへ向かった。世界と戦うために中・長距離王国で掴んだ“粘り強い走り” と常に意識する“世界女王・F.キピエゴン(29)”。田中のケニア合宿に密着した。
田中選手:
明確に“より強くなるため”にケニアに来ました。世界陸上とか、来年のパリ五輪に活かしたいなと思って。

2年前の東京オリンピック。田中は1500mで日本人初の8位入賞を果たし、去年の世界陸上では、日本人初の個人3種目(800m予選敗退、1500m準決勝敗退、5000m12位。)に出場した。歴史的な挑戦だった。
3種目を走り終えた田中を高橋尚子キャスター(51)が直撃した。
高橋キャスター:
始まる前は冒険とおっしゃってましたけど、終わってみてどんな冒険でしたか?
田中選手:
楽しむって気持ちより、恐怖だったり…(涙)
高橋キャスター:
よく頑張ったよ。
田中選手:
(涙)結果がでないと、きれい事になってしまったりするんじゃないかっていうのもあって、結果を出せる選手になっていけるように。

そう泣きながら誓った。
そして、田中は世界で結果を出すために、世界で一番結果を残している国で、自分を追い込むと決めた。世界陸上、中・長距離で過去5大会で58個のメダルを獲得しているケニア。
合宿を行ったケニア・イテンは標高2000m超で酸素は薄く、時には砂利道を走る。タフさが求められる環境は、ケニアならでは。さらにもう一つ、ランナーたちの逞しさ。生きるためには結果を残さなければならない、そんな覚悟が、練習から漂っていた。
田中選手:
皆でやろうというのもありつつ、走り出したらレースみたいな、振り落としていく真剣さがあったり、いい感じのライバル関係が常にあるなあと思います。

そうした刺激を受けながら、黙々と走り込む。時には、男子のペースメーカーより前に出ることも。苦しい練習が続き、そんな時に思い浮かべるのは、ケニアが生んだ、ある超人の背中。東京五輪1500m金メダル、1500m&5000m世界記録保持者、F.キピエゴン(29)。
田中選手:
世界のトップは常に意識しているので、キピエゴンだったらどうするかなとか。
キピエゴンは先月、田中が得意とする2種目の両方で、世界新記録を打ち立てた。
田中選手:
キピエゴンだったら、ここで苦しくても粘るから世界記録が出せたんだろうなとか考えたら練習でも我慢できるようになったので、そこはすごくレースにも、もっと活かしていきたい。
“キピエゴンなら、苦しくても粘るはず”その意識が、少しずつ彼女を変えていった。

田中選手:
とにかく練習についていくのが必死の中で、きつい時にきつさから逃げないというか、粘り方というか鍛えられているなと感じました。
“粘り強い走り”それこそが、ケニアで掴みたかったもの。
田中選手:
世界のトップ選手の中で粘っている自分とか最後までトップに残っている自分を見せたい気持ちは大きいです。
その姿を世界陸上ブダペスト(8月19日開幕)で披露する。