“見たことない皇后さまの笑顔”が生まれた背景

皇后さまのあの笑顔がうまれたのは、ジョコ大統領夫人との会見でのことだった。この場合の「会見」とは、いわゆる記者会見のようなものではなく、「会うこと」を指す。

日本で両陛下と外国の賓客との会見が行われる場合は、両陛下がお住まいの御所で、丸テーブルを囲みいくつかのテーマに沿って会話が繰り広げられる。

しかしインドネシアスタイルは勝手が違った。大統領夫人が、バティックというインドネシア伝統の染め物など様々な文化的なプログラムを用意していて、皇后さまがそれを体験するという形で行われた。驚いたのは、インドネシア政府が、この会見の一部始終のカメラ撮影を許可したことだ。そもそも、この大統領主催の公式行事は、インドネシア政府のYoutubeで生配信されていたのだが、日本から同行したカメラマンも、ここまで撮れるとは想定外だったであろう。

国内であれば、皇后さまの撮影は、三脚に固定したカメラで遠くからとるのが常だ。それが今回は、カメラを担いでのいわば「密着取材」スタイルで行われたのだ。かくして宮内庁職員ですら「見たことない」と言った皇后さまの笑顔がとらえられた。

こんな笑顔も

しかし、日々取材している立場からすると、「“カメラの前での”あんな笑顔は見たことない」というのが正確なところだと思う。

カメラ撮影ができない場所で垣間見える皇后さまのお人柄

普段、こうしたカメラ取材ができないだけで、今、皇后さまの自然体の笑顔は間違いなく、あるのだ。コロナによる規制が少なくなり、様々な行事にお出ましになるようになった両陛下。皇后さまは時に声をあげて笑われ、自ら冗談を言われることもある。今年4月、とある式典で案内役を担当した和田内閣府副大臣と田和内閣府次官に対し、皇后さまは「和田さんと田和さん・・・あ、私は(元)小和田です」といって、周囲を大いに笑わせられた。6月4日に岩手県を訪問した際には、奉迎者の熱烈な「陛下ー!雅子さまー!」という声に応え、予定にはなかったがその人たちのもとへ歩み寄られた。「あ~雅子さまおきれい!」と言われると、笑いながら「ありがとうございます」と応え、しばし会話を楽しまれた。いずれも、記者はいるが、カメラ撮影は許可されていない場面でのことだった。映像がないと伝えられないことも多く、両陛下の人柄がにじみ出るこうした場面を広く伝えたいと、現場でもどかしく思うことが多々ある。

岩手で撮影できた映像 実際は一般の人とも交流された