◆日本と中国との「共闘」は不可欠
中国と日本の間で、禁止薬物取り締まりで、協力できる分野もあるだろう。インターネット上やSNSの悪用、さらに隠語を使って大麻や、合成薬物の密売が横行するなど、若者が簡単に薬物に手を出しやすくなっている状況は、日本も中国もよく似ている。
警視庁や埼玉県警などが6月に発表した事件だが、中東のUAE(アラブ首長国連邦)から覚醒剤を密輸したとして、日本在住の中国籍の男女4人が逮捕された。運んだ船は中国経由で、東京港に着いた。コンテナから覚醒剤約700キロ、末端価格にして434億円相当が見つかり、押収されている。
今回押収された700キロの覚醒剤は、昨年1年間に全国で押収された総量を超える規模だ。1回の押収量としては過去2番目に多い。つまり、現場は日本だが、中国人が関与したとされる事案も少なくない。
このほか、日本での密売に、中国に拠点を置く組織の関与が疑われるケースもある。日本に入った禁止薬物を回収する、いわゆる「受け子」を、SNSを通じて、闇バイトとして勧誘される例が多い。日本の法律の規制が及ばない海外のインターネットサイトが使われているのだ。ICPO(国際刑事警察機構)を通じて、日中両国の間での情報交換が欠かせない。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)
1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。