■7割は「いじめ・脅し・暴行の被害者」 6割は「復讐のため」

(米・テキサス州 銃乱射事件の現場)

そして、加害者の多くは、“いじめ”等の被害を受けていた。41人のうち29人、つまり7割は、いじめを受けたり、脅されたり、暴行されたりした経験があった。もちろん全てのケースではないが、こうした「いじめ被害」等の経験が、学校襲撃に向かわせた可能性があると分析されている。

加害者の動機として、最も多かったのが「復讐のため(61%)」だった。“復讐”に次ぐのは「問題を解決しようとした(34%)」。そして「自殺または自暴自棄になった(27%)」。また、「目立ちたかった(24%)」という動機もあった。全体の半数以上は、これら複数の動機・理由があったと指摘されている。

■最新分析では加害者の8割が「いじめ被害者」

2002年の報告書が出た後も、アメリカでは、いじめ被害者による学校襲撃事件が続いている。2019年に発表されたシークレットサービス局の報告書でも、2008年から2017年までの学校襲撃事件の加害者35人を分析したところ、28人(80%)がいじめ被害に遭っていたという。ビラノバ大学のDowdell教授らの調査報告(2022年)でも、2013年から2019年までにあった学校での銃撃事件の25人の加害者について分析したところ、6割以上が「直接」または「ネット上での」いじめを受けていたという。

福井大学「こころの発達研究センター」杉山登志郎客員教授(児童青年精神医学)は言う。「学校襲撃事件の背景として、いじめの影響は大きい。程度にもよるが、いじめ被害の心へのダメージは大きく、PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)になることも多い。怖かった経験の記憶が心の傷(トラウマ)として残り、様々な症状を引き起こしてしまうことがある。人には発達のデコボコがあり、必ずしも時間が経てばトラウマが消えるというわけではない。原因は複雑で、一般論では言えないが、学校襲撃事件は、そうしたトラウマが学校への復讐となって形に出たのではないか」。

新潟青陵大学の碓井真史教授(社会心理学)も、「いじめによる心の傷は普通の人が考える以上に深い」と言う。「いじめ被害は後になって症状が出る人もいる。苦しみから復讐心を燃やす人もいる。一般的に、自分が被害を受けたのに効果的な反撃ができない時、復讐心が生まれる可能性がある。時間が経つにつれて復讐心が薄れる人もいるが、雪だるま式に高まる人もいる。 “なぜ俺だけが不幸なのだ”となり、思考が歪んでいく人もいる。こうした先に、学校襲撃事件が起こってしまうのではないか」。