■アメリカの“あいまい戦略”の行方は? 狙いは中国抑止のメカニズム


ーー日米首脳会談がありましたが?

相当、日本がんばったんじゃないんですかね。サミットを広島でやるとか、2+2は経済版やるとか、日本の防衛力増やしますと言って、日本の国内でもまだ大きな反応がない。いままでのセットメニューに加えていくつかの大きな進展があったと思います。

ーーバイデン大統領の台湾有事に際して軍事的に関与するのかという質問に、「イエス」と答えた発言が話題になりましたが?

これは初めて言ったわけではなくて、もう3回目ですよ。3度目の正直かどうか知りませんが、私のイメージは、これは確信犯だなと。いい意味で。ただし、1970年代につくった台湾海峡の安定のメカニズムの中にアメリカの“あいまい戦略”も入っていて。これは非常に重要な要素であって、中国もそれを評価していました。今までは台湾が攻められてもアメリカは何するかわからない、言わないと。中国の力が弱ければ、「何をするかわからないならやめておこうか」となるはず。もし中国の力が強くなって、「アメリカが何するかわからないなら、じゃ俺たちやるか」というふうになりかねない。抑止のメカニズムが効かないという心配をアメリカの一部の人がし始めた。これは去年の9月。

だから今こそ“あいまい戦略”をやめて、明確戦略にしろ、すなわち台湾が軍事攻撃されたら、武力を使ってアメリカは介入するんだと、明確に入れるべきだという声が、保守派の人を中心にアメリカで去年から出てきました。私が心配しているのは、その部分だけ明確化しますと1970年代に作った抑止のメカニズムが吹っ飛んじゃうから、どうやってかわりに中国の台湾侵攻を抑止するんですかと。1970年代、非常に慎重に枠組みをつくったわけですから、これを放言・失言みたいな形で変えていくのはいかがなことかと思います。
ただアメリカの考え方も政府の内部でどういう議論があったのかはわかりませんが、おそらく、打ち合わせの時から(大統領が)これを言うぞと、言っていたと思います。そういう意味では完全に政府の中で統一見解があるわけでないけど、「大統領はあれを言うな」とみな思ったと思います。


おそらくアメリカは、今までの“あいまい戦略”という大きな枠組みは変えないが、“あいまい”ではあるがその“あいまいさ”を少なくする。つまり、今までは中国が台湾を攻めたならばアメリカは何するか何も言わない、何もしないかもしれない、ということですが、今の“あいまい戦略”は、アメリカは軍事的に何かすると。それはもしかしたら台湾関係法がいう「武器の供与」だけかもしれないし、せいぜい訓練だけかもしれない。軍事的な関与というのは台湾関係法の「武器供与」から始まって、最終的には「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」までいくわけですよ。これは広い概念ですよね。その中のどれを取るかは“あいまい”にしているという形で、あらたに中国に対する抑止のメカニズムを作ろうとしているのかなと。大丈夫かな、というのが私の率直な印象です。