ロシアの侵攻によるウクライナでの悲劇的な紛争が激しさを増す中、日米が中心となり「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、東京を舞台に行われた外交。
日米首脳会談、QUAD(日米豪印)首脳会合、米国が主導して発足した新たな経済枠組みIPEF(インド太平洋経済枠組み)について、その成果と評価をキヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦研究主幹(内閣官房参与・元外交官)に聞きました。(聞き手:川戸恵子キャスター)

■「インド太平洋も大事なんだ」ポイントは“インドを引き込むこと”


ーー一連の外交の評価と影響は?

日本はよくやったと思います。みんながウクライナのことしか考えていないときに「インド太平洋も大事なんだ」と再確認するのは大事なこと。韓国とオーストラリアが新しいリーダーとなった時に、今までの方向性が続くというのは、これまた大事なことですから。
日本も、日米とか日中とかだけでなく、常にヨーロッパでの状況、中東での状況を見ながら考えていかなければいけない。アメリカをインド太平洋地域に置いておくためには、欧州が安定しなければいけない。欧州が安定するということはNATOが強くならなければいけない。日本にとっては「強いNATO」は利益なんです。安定させれば米軍は介入する必要はないわけだから、その分だけ中国に勢力が注げると、こういう発想をしなけらばいけないんだろうと。


ーーそれが今回、見事に現れた?

そうですね。もう始まったなと。

ーーQUAD(日米豪印)については?

QUAD、これは同盟ではなく、あくまでも話し合いのフォ-ラムなんです。徐々に徐々に中身がついてきていて、1回目の共同発表なんてA4で2枚くらいでしたから、(今回は)相当充実していますよね。ロシアを非難しているかと言ったら、していない。南シナ海のことは言うが、中国とは言わない。これは初めからそうなんです。AUKUSとかNATOとかそういうものとは違うわけです。
インドをどのように関与させるか、インドは元々非同盟の国だし、今は戦略的自立性、勝手に独立でやりますよということですから、そういう人たちに同盟に来いといっても来るわけないんですよ。QUADの最大の目的はインドを関与させることです。


ーーIPEF(インド太平洋経済枠組み)とはどういうものですか?

そもそもバイデン政権は貿易交渉の交渉権限がないですから今、関税引き下げなんかできるわけないんです。議会から(承認を)もらってないですから。となると、アメリカがこのような状況の下でインドを巻き込みつつ、何かTPPに代わる枠組みを考えなければならない。だけど貿易交渉はできない。よく言えばすばらしい、悪く言えば苦肉の策でIPEFを考えた。必ずしも経済の枠組みだけではなくて、やはり安全保障を念頭に置いたものですから。経済安全保障であるとか、サプライチェーンの問題とか、新技術の問題とか、そういうところに焦点を当てて、うまくTPPと違う世界で中国に対抗する動きを補強しようとするもの。


ーーインドをどう引き込むか、ASEANをどうするか、大変だったそうですね。

ASEANの国はだいたい来るべき国は来ました。そういう意味ではうまくいったのかなと。まだ構想をぶち上げただけで、これから中身を詰めなければいけないという点では、まだまだ道は遠いと思います。
インドにとって、おいしいところはありますよね。サプライチェーン、貿易等々でこれからインドが発展していくためにはアメリカとか日本との関係を強めることで経済をこれからも発展させていくという意味では、これにのらないという手はないものだと思います。
アメリカは11月に中間選挙があって、バイデンさん(大統領)は国内政治を考えて、選挙対策でこれを打ち出した部分ももちろんあるんです。

ーー日本の役割は?

これを本格的なものにするには日本が相当知恵を出さなけらばいけないと思います。アメリカの思う通りやられたらみんな困りますからね。

ーー(アメリカに)TPPにまた参加してくれとは?

それは言い続けるんです。言い続けるんですけど、当分(アメリカの参加は)無理です。