「何をしても償いにならない現実と虚無感に押しつぶされそうです」

福岡拘置所で勾留されている奥本章寛死刑囚(38)は、妻と妻の母、生後5か月の息子の3人を殺害した罪の重さにもがき苦しんできた。

筆者と奥本死刑囚 宮崎拘置支所 2014年

「命が尽きるまで償いの人生を生きたい」。2014年に死刑判決が確定した際、筆者にそう誓った男は、勾留生活が15年を超えるにつれて次第に心のバランスを崩し、ある決断に踏み切った。

「死刑を早めてほしい」。奥本死刑囚は2025年、刑の早期執行を求める上申書を作成したのである。

決して償えない罪を前に、加害者はどう生きていけばいいのか。事件から16年、死刑囚の苦悩の軌跡を取材した。

(TBSテレビ 西村匡史)

家族3人を殺害した男 犯行のきっかけ

奥本死刑囚

2010年3月、建設会社の土木作業員として働いていた奥本章寛死刑囚(当時22)は、宮崎市の自宅で生後5か月の長男の首を絞めて殺害。さらに妻と、同居していた妻の母親をハンマーで殴って殺害した疑いで逮捕された。

犯行の直接のきっかけは、以前から度重なる叱責を受けていた妻の母親から何度も頭を叩かれた上、出身地を差別的な発言で見下されたことだった。

なぜ妻と息子まで殺害したかについては、奥本死刑囚自身も当初、その理由を言葉にして説明することができなかった。だが、4か月間に及ぶ臨床心理士による心理鑑定で「3人が一体で、自分一人だけが別世界にいるという孤独感を抱き、視野狭窄に閉ざされたものと考えられる」と分析され、裁判所も信用性がある内容として証拠採用している。