罪を犯してしまった少年たちに少年院で会ってきました。黒髪・短髪・幼さが残る顔。取材して感じたのは、複雑な生い立ち。未熟ゆえに犯した過ち。成長途中ゆえの立ち直りの可能性でした。新たな矯正プログラム「大人へのステップ」とは。
18歳少年「友達のために万引き」して“関係を維持できる”感覚に
少年院送致18歳(傷害)
「正直ほんとに楽しかった思い出は無くて。いつも暴力っていうかそういうのを受けていたので。友達が親から僕とは『関わってはダメ』って言われているのも何回か聞いていて、悪い方向にしか居場所が無くなった」

少年院送致21歳(無免許過失運転致傷など)
「ワールドカップもWBCも好きだったので。サッカーだと久保建英選手。野球だと佐々木朗希選手。2人とも同い年(学年)なので、そう思うと、自分もこれから頑張らないとなって」
東京・八王子市にある多摩少年院。
日本で最初にできたこの少年院は2023年、100周年を迎えました。

現在、収容されている少年は82人。
傷害や窃盗事件を起こしたケースが多く、強盗や道路交通法違反でやってきた少年もいます。
少年院送致21歳(無免許過失運転致傷など)
「僕が一時停止を無視して右から来た車の左前部分と衝突して(自分の)車を置いて僕は逃げたんですけど、当時薬物(大麻)をやっていて何が何だかわからなかった。無免許なので自賠責も入らないし、保険すら無い。メチャクチャな車でした。本当になんか、申し訳ないだけじゃ済まされない」

虐待を受けていたり発達障がいと診断されていたり、家にも学校にも居場所が無かった少年は少なくないといいます。
中学生のころ、発達障がいの診断を受けたという少年。小学生の時から周りに理解されず、問題児扱いされたと話します。
少年院送致18歳(傷害)
「ADHD(注意欠如・多動症)とLD(学習障害)という特性があって、クラスに居られなかったりして。よくわからないけど横柄な態度をとったり暴れたりしていたので。小4の時に担任の先生がみんなの前で僕のことを『悪いことで有名な問題児だ』って言ったことをきっかけに、悪い方向にしか居場所が無くなったって言うか。家でも親に縛られて暴力されて。本当に自信が無くて。モノとかで釣るって言うか、友達のために万引きするとか」
――万引きしたものをあげると友達は?
「『ありがとう』って。“これで関係を維持できる”って感覚になりました」

少年たちと日々接する教官の思いは複雑です。
――“少年院に来る前に誰かが何か出来たのでは”との思いは?
多摩少年院 石井教官
「それはあります。周りのサポートや関わり方で、多分だいぶ変わってくるもので」
――少年たちは社会の理不尽によって追い詰められた?
多摩少年院 石井教官
「ちょっと厳しい言い方をすると、最後に非行・犯罪をしようと決めたのは自分なのでそこはしっかり責任を取らなければいけないと思います。もう少しいい環境であればっていうのは事実あるんですけど、人を傷つけることへの抵抗感や罪悪感は、彼らは持ち続けないといけないと思います」
