FRBはタカ派的姿勢。日銀の政策変更のカギは為替か?

経済見通しの中身を見ると、5.1%が終着駅だと言われたのを0.5上方修正した。経済は思っていたより強いというのがFOMCの見通しだ。

――今後2回も利上げするかもしれないと言わざるを得ないのは、インフレが収まらないからか?

東短リサーチ代表取締役 加藤出氏:
下がってきたのは確かなのですが、コアの下がり方がゆっくりなのです。なぜゆっくりかというと、人手不足からくる賃上げ圧力が強いというのが背景にあります。賃上げによるインフレも静まり方がまだ遅いということです。

――失業者1人に対する求人は?

東短リサーチ 加藤出氏:
少し下がってきているとはいえ、相変わらず高水準です。大手企業のレイオフのニュースが時々出ますが、すぐどこかで採用されるという状況です。これをFRBとしては押し下げたいわけです。

――賃金もなかなか落ちない?

東短リサーチ 加藤出氏:
転職者、非転職者とも統計開始以来最高の水準にあります。FRBとしては非常に悩ましいわけです。金利を上げていくと、3月以降現れた銀行の破綻の問題とかまた出るかもしれないし、その辺のバランスを取ろうとして今回は1回見送ったわけですが、まだこの状況だと利上げを止められないということなのでしょう。

――今後のFRBの見通しは?

東短リサーチ 加藤出氏:
7月は(利上げを)やるのでしょう。9月はまた見送り、あと1回が11月だと思いますが、ここは5分5分ですかね。秋にかけて経済指標がたくさん出てきます。インフレがある程度下がってきたとなれば無理してやらないということでしょう。ただ、あり得ますよということはずっとパウエル議長は言い続けるということでしょう。

タカ派のポーズをとり続けるパウエル議長と対照的なのが、日銀の植田和男総裁だ。「粘り強く金融緩和を継続していく」方針だ。足元の消費者物価は3.4%の上昇と、日銀が目標とする2%を上回っており、植田総裁は「国民の大きな負担になっている」との認識を示した。

――アメリカの利上げが長引いて、日本が修正に動く余地が出てきている?

東短リサーチ 加藤出氏:
今絶好のチャンスで、10年金利を固定している政策を少々緩めてもそんなに長期金利は上がらない環境にあると思います。別にどんどん金融引き締めをすべきと言っているのではなくて、今やっている政策の弊害の部分をちょっと緩和しておいてからじっくり今後見極めていくというなら、7月までに政策変更すると非常にいいタイミングだと思うのですが、どうも慎重です。

――物価は既に2%を超え、実感としては10%近く上がっている?

東短リサーチ 加藤出氏:
現状のインフレは財政資金で電気料金とか抑えているからこれで済んでいるわけで、実際はもっと高いわけです。日銀が動かないと言えば為替市場で円安が進んで、それによってまた輸入物価が上がってしまうということが起きる。

――今後円安がどこまで進むかが日銀を動かす一つのカギになるかもしれない?

東短リサーチ 加藤出氏:
為替がズルズルと円安に行ってこれはまずいということになれば、植田総裁も(政策変更を)決断するということでしょうから、その点では為替は要注意です。

(BS-TBS『Bizスクエア』 6月17日放送より)