カナダ在住の“鉄道解説系ユーチューバー”の鐡坊主(てつぼうず)さん。
旅行会社勤務の経験を活かし、地域の“鉄道事情などを解説する”動画をアップしています。
鐵坊主さんは、「乗り鉄」でも「撮り鉄」でもない…『分析鉄』なんです!
動画取材のために来日した鐡坊主さんの旅から、“北海道の鉄道の課題”が見えてきます!
北海道に来る前にも、全国各地をめぐってきた鐡坊主さんが、小樽駅周辺を見た後に向かったのは…

鉄道解説系ユーチューバー 鐡坊主さん
「だいたい想像通り、もともと何もないところ。かなり街から離れているのを再認識しましたね」
小樽駅からおよそ5キロ。北海道新幹線『新小樽駅』の建設工事が進む天神地区です。
事前に資料やインターネットの地図などで徹底的に下調べをし、こうして現地を訪れて“答え合わせ”をするのが『鐡坊主スタイル』です。
鉄道解説系ユーチューバー 鐡坊主さん
「何もないところなので…小樽市がこれ(新駅周辺)をどういうふうにしていくのか。そこ(中心部)とここの動線をどうしていくのか注目ですね」
実際に現地をみて『賑わいの中心である小樽駅などと、新駅とのアクセス構築が“新幹線効果”をマチにもたらすカギになる』と分析します。

一方『分析鉄』として”地域の鉄道事情”を解説するため、時には廃線後の沿線に足を運ぶことも…。
この日は、4月に廃止された石狩沼田-留萌間の代替交通を取材。
深川市から留萌市に向かう路線バスに乗りました。
時刻表と、現在地を照らし合わせながら、利用状況をその目で確かめます。
そして留萌市に到着後は、かつての駅前へ
鉄道解説系ユーチューバー 鐡坊主さん
「昔からある国鉄時代からあった駅舎がそのまま残っている、鉄道ファンの間では非常に高く評価される駅。これだけ人口の少ない所に来ると、留萌の市内は時間帯によって交通量も多くなると思うが、(バスの)定時性はほぼ守られるので、バスで全く問題なくカバーできてしまうなというのが、正直なところ」

鐡坊主さんがあげる動画の特徴は、データを基にした解説。
その“冷静な視点”に共感するファンも多いと言います。
先月、室蘭市で開かれたファンとのオフ会をのぞいてみると
鉄道解説系ユーチューバー 鐡坊主さん
「今回、いろいろ乗ってみて思ったんですけど、人口が増えない以上、(鉄道利用の)活性化対策をやっても、もう先細りだと思うんです」
全国各地から14人が参加。真剣にメモを取りながら、話を聞くファンの姿も。
参加者(東京から・40代)
「滋賀県の近江鉄道と茨城県の鹿島臨海鉄道のイベントにも参加しました。(魅力は)説得力!」

参加者(神奈川から・公共交通を研究する大学院生・20代)
「よくも悪くも数字(データ)を素直に受け取って、(動画を)配信している。(自身の研究にも)かなり参考にさせていただいています。実態や現状をどう把握するべきか、議論するのに使っています」
ファンとの交流もそこそこに、オフ会が終わると、すぐさま、北海道内視察の最後の地となる函館市へ。
気になるのは『新幹線乗り入れ』に揺れる函館駅の周辺です。
鉄道解説系ユーチューバー 鐡坊主さん
「函館市として資金を拠出して新幹線を引くのであれば、(函館に)住む人がどういうふうにそのメリットを感じられるのか、その辺をちょっと肌感覚でチェックしたいなと思います」
まずは2019年にオープンした『駅前横丁』や朝市など、函館駅周辺を見て回ります。
続いて向かったのは、地元の人で賑わう”五稜郭エリア”です。
鉄道解説系ユーチューバー 鐡坊主さん
「(五稜郭には)歩いている地元の若い人がいますよね、函館駅(周辺)には観光客しかいなかったので。函館駅は、地元の人にとってあまり意味のある場所ではなくなっている。路面電車がありますから、車がない人はそれを使う。これがこれで問題で、JR北海道の路線を、地元の人はほとんど使っていないということになる」
地元の人の鉄道離れが、北海道内各地で起きているという鐡坊主さん。
新幹線の札幌延伸を控える、北海道の鉄道の未来を、こう分析しました。
鉄道解説系ユーチューバー 鐡坊主さん
「これからさらに人口も減っていくこともあって、鉄道は非常に厳しい局面にある。運賃収入だけで鉄道を計ると、全部廃止しなきゃいけなくなってしまう。極端な話、北海道でいえば、札幌周辺と新たに作っている北海道新幹線だけですからもう、JR札幌になります、最終的には…。(そうならないために)JR北海道がもっと事業を拡大していかなきゃいけませんし、その事業というのは、残念ながら鉄道ではなくて、鉄道を軸にした、鉄道があることによってできることっていうのを考えて事業を拡大しなければならないと思いますね」
鐵坊主さんは、旅行会社に勤務していた経験もあり、ファンの大学院生が研究の参考にするほどの分析力なんです。
その鐵坊主さんが、実際に道内をまわって分析した「北海道の鉄道の未来」をまとめると…
・鉄道の収益だけで考えると道内は全路線が赤字
・将来残る路線は、北海道新幹線と、在来線では札幌駅周辺と函館・旭川・帯広までの路線だけ
これではJR北海道ではなく、JR札幌としか言えないような状態になりかねません。
こうならないために、鐵坊主さんは鉄道以外の事業の拡大が必要だと分析しています。
その“お手本”の1つがJR九州で、マンション、駅ビルなど、不動産で大きな収益をあげ、赤字路線の損失をカバーしています。
実際に、JR北海道は札幌駅の再開発に取り組んでいる最中。
新幹線の札幌延伸という大きな節目に向けて、JR北海道がどう経営を強化していくかにも注目です。