盛岡市の岩手銀行赤レンガ館で、知的障害のある作家の絵画や陶芸、織物などを集めた展覧会が開かれています。会場は言葉を超えた作家との対話を楽しむことができる空間となっています。
ホールに展示された絵画や陶芸、織物などのアート作品の数々。200点近くある作品は全て知的障害のある作家の創作活動を支えてきた岩手県花巻市の「るんびにい美術館」の利用者16人が制作したものです。
盛岡市での展覧会は、美術館の開館15周年と運営する社会福祉法人の創設55周年を記念して開かれています。

展覧会の開幕を翌日に控えた16日、会場では展示作業が大詰めを迎えていました。普段は入ることのできない吹き抜けのバルコニーから吊り下げたのは「さをり織り」です。
るんびにい美術館のアートディレクターを務める板垣崇史さんです。数ある作品の中でもこの「さをり」の展示には思い入れがあります。

(るんびにい美術館アートディレクター 板垣崇志さん)
「『さをり』の思想というものがあって、織物に失敗とか傷物というのはない。どういう織りであれ、その人の思いとか心とかいろんなものが表れている、すべて正しいという思想がある」
ホール正面に飾られたのは、人をモチーフとした創作活動を続け、2013年に亡くなった矢巾町出身の昆弘史さんの作品です。

昆さんの作品は2010年、パリのアル・サン・ピエール美術館で開かれたアール・ブリュット・ジャポネ展にも出展されました。
何度も何度も重ね塗りして描かれた人々の顔は様々な表情を浮かべています。

(板垣さん)
「決してポジティブなだけでない作品だと思うんです、昆さんの作品って。何かわかりやすいとか、心地良い絵というだけではなくて、こういう人生がある、その中でこんな経験がある。思いがあるというものが真ん中にある展覧会にしたい」
展示されている作品の多くにはタイトルがありません。作家の多くは言葉を使ったコミュニケーションが得意ではなく、創作活動は自身の思いや願いを精一杯表現するいわば他者との対話でもあるのです。