■プレイヤーを増やすには、やはりインセンティブが必要

これまで「社会貢献に熱心な層」の人たちを「ゲーム要素」で引き付けることでプレイヤーを増やしてきた鉄コンだが、もっと多くの人にプレイしてもらうことは今のままでは難しいと考えているようだ。

鈴木さん
「既に参加してくれている人たちは社会貢献に関心のある人たちなんですね。“自分がこれをやることがいいことだからやる”っていう。だから、報酬があるとかないとか関係なく参加してくれています。ただ、これを日本全国、幅広い人にやってもらおうと思うと、正直何かしらのインセンティブ(報酬)がないとダメだと思っています。そこで、マンホールの写真を撮ってくれたことや、レビューをしてくれた対価として今考えているのが『トークン=暗号資産』です」

「トークン」とはビットコインのような、電子データでやりとりされる資産のこと。取引所を通じて法定通貨、もしくは他の暗号資産に交換することができる。近い将来、マンホールの写真や情報などの市民が集めたインフラデータに対して報酬としてトークンを渡す仕組みを考えているのだという。

現金や商品券などではなく、「トークン」にするのはなぜなのだろうか?

鈴木さん:
「マンホールのデータ1個に対して、じゃあ100円ね、というように法定通貨の価値をつけることは、正直できないと思っているんです。我々はトークンが使われるエコシステムを作っていこうと思っていて、ただ単にトークンを配り続けてもそれは無価値なんですけど、例えば自治体などがトークンを使ってそのデータを使いたい、という形になれば、トークンが回っていきます。エコシステムが大きくなっていけばいくほど、価値は上がっていきます。そういう新しい価値の概念を作れるのが、トークンだと思うんです」

トークンを絡めたエコシステムが出来上がれば、インフラデータを集める事が、“ボランティアじゃないボランティア”、つまり報酬も得られ、一生続けられる社会貢献活動になっていくのではという。

■マンホールだけじゃない インフラの老朽化はまったなしの状態

現在は「鉄コン」というゲームだけを運営しており、対象もマンホールだけだが、今後は数ある他のインフラにも広げていくことを考えているという。例えば電信柱、あるいは民間のインフラである踏切や駐車場など人々の生活に欠かせないものは全て対象になり得るのだそうだ。

インフラの老朽化は待ったなしの状態で、「これからますます自分たちの手で守っていかなくてはならないものになっていく」と鈴木さんは話す。

最後に、市民の力でインフラを守っていけそうですか?と尋ねると、力強い言葉が返ってきた。

鈴木さん
市民の力でいけると思います。三島市等の例を見ても、市民を巻き込めば一気に解決するということが既に実証できていると思うし、スマホ一つでできる事なので、身近なものになって皆が定期的にやるようになっていけばすごく価値のあることだし、きっとそれができるんだろうと思っています」