入管をめぐる様々な問題が浮上する中、改正入管難民法が成立しました。難民申請中でも、3度目以降は強制送還を可能にする改正法。難民審査の方法にも疑問の声があがっています。
「申請者に難民がほとんどいない」発言の参与員、全体の25.9%(1231件)を担当
6月9日、入管法の改正を審議する本会議に、名古屋入管で病死したウィシュマ・サンダマリさんの妹の姿があった。この法案については、入管の医療体制の強化が先だとして、2021年に一度廃案になった経緯がある。にもかかわらず、医療体制の問題がまた発覚した。

大阪入管に収容されていたコロンビア人女性
「ドクター、ドクター、お酒飲んでた。私に言った、胆石どうでもいい、どうでもいい。薬くれなかった」
2023年1月、大阪入管で胆石に苦しむコロンビア人女性を、常勤の女性医師が酒に酔った状態で診察していたという。法務省はこの事実を公表しておらず、5月30日に難民を支援する団体によって明らかにされた。

さらに、法案採決が差し迫った6月6日。共産党の仁比聡平議員が、この医師のアルコール検査報告書を入手。呼気1リットル中に0.36ミリグラムものアルコールが検出されていたことも明らかになった。車の運転中であれば免許取り消しになる(呼気1リットル中に0.25ミリグラム以上)レベルだ。医師は医療業務から外され、事務作業をする事となった。
1月に起きたこの事態について、これまで公表していなかった斎藤法務大臣は・・・
斎藤健 法務大臣
「訴訟になる可能性が強い案件。事実関係の確認には慎重を期す必要があり、それなりの時間がかかる。私は今までも出来る限り早く、この手のものは公開するように努めてきたつもり。本件は特殊な事情があるということで、ぜひ御理解を頂きたいと思っています」
――なぜ入管庁のこうした不祥事を隠し続けてきたのですか?
斎藤健 法務大臣
「どうもありがとうございました」
――責任を取らないのでしょうか。このまま採決をやるのでしょうか?
斎藤健 法務大臣
「…」

ウィシュマさんの妹たちはこう憤る。
ウィシュマさんの妹 ワヨミさん
「すごく悲しいことです。姉と同じようなことが繰り返されています。私の姉にも酒に酔った医者が、間違った薬を出したのではないかと考えてしまいます」
改善されたはずの医療体制をめぐる不祥事。さらに、入管法改正の根拠の1つとなった発言にも疑問の声が上がっている。入管が難民と認めなかった外国人の審査を行う参与員の柳瀬房子氏は2021年4月21日、政府の参考人として国会に呼ばれ、こう発言していた。

難民審査参与員 柳瀬房子氏
「参与員が入管として見落としている難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません。私だけではなくて、他の参与員の方、約100名ぐらいおられますが、難民と認定できたという申請者がほとんどいないのが現状です」
この柳瀬氏の発言などを根拠に難民に当たらない人が申請を濫用しているとして、改正案では3回目以降の難民申請で強制送還の対象になり得るとされた。
斎藤法務大臣
「柳瀬氏は参与員制度が始まった平成17年から現在に至るまで、長年にわたり、熱心に参与員を努めていただいている。この発言は、私どもは重く受け止める必要がある」

入管庁によると、柳瀬氏は2022年の1年間、対面と書類で1231件の審査を担当した。111人いる参与員が行った全審査のうち、柳瀬氏は25.9%を審査したことになる。柳瀬氏の審査件数に疑問をもった難民支援者のAさんが質問状を送ったところ、柳瀬氏本人から電話がかかってきたという。Aさんはそのやりとりを公開した。