6月11日は暦の上で「入梅」とされており、「傘の日」と定められている。全国的にすでに梅雨入りしているところも多く、傘を持ち歩く日も増えてきた。そんな時によくやってしまうのが、傘の“置き忘れ”。ついさっきまで手にしていた傘を、なぜ忘れてしまうのだろうか…。

傘を忘れてしまうワケ 「予定した行動を思い出すことは難しい」

梅雨になると活躍する傘。この時期の必需品なのに、電車、駅のトイレ、飲食店…傘のことをすっかり忘れてどこかに置いてきてしまうことはないだろうか。
警視庁によると(※1)、令和4年はかさ類の拾得届が28万763点も出されている。

筆者も、改札でハッと気付いてホームに駆け戻ったり、飲食店で食事をした後、雨が止んでいると傘を持たずに帰路についてしまったりする。

ちょっと前まで手にしていた傘を、なぜこうもすぐに忘れてしまうのか。ヒューマンエラーを研究している、産業心理学者の芳賀繫立教大学名誉教授によると、理由は2つあるという。

産業心理学者 芳賀繁 立教大学名誉教授
傘は安いからだと思います。もう一つの原因は身に着けていないからですね」

最近は、ビニール傘など安い傘を使う人が多い。そのため、なくなっても痛手にならないことから忘れやすいと考えられるそう。確かに警視庁のデータ(※1)でも、かさ類の拾得届は28万763点に対し、遺失物届は6226点と極端に少ない。安価な傘を使っている人が多いことから、“なくなったら諦める”くらいの感覚となり、届け出が少ないと考えられる。

また、電車の中ではつり革につかまったり、荷物を抱えたり、スマホを利用する人も多く、両手が塞がってしまう。そのため、傘の置き場に困り、濡れている傘は体から離れたところに置かれがちだ。このことも傘を忘れやすくする原因だという。

芳賀 立教大学名誉教授
「ただでさえ、タイミングよく『駅に着いたら傘を持って降りる』などという、予定した行動を自発的に思い出すのは難しいのですが、スマホや考え事に注意を奪われている時は、いっそう思い出すことが困難になります」

確かに、一度手元を離れた傘のことを考えることはほぼない。スマホに夢中になったり、友人と会話をしたり、傘のことは意識からなくなってしまうものだ。

では、傘を忘れることは仕方のないことだと諦めるべきなのか。なんとか「傘を持って降りる」「傘を持って会社を出る」と自発的に思い出すことはできないのだろうか。芳賀教授は、“予定した行動を思い出すことは困難”だという特質を認識することで、できることがあると話す。