「強じんなサプライチェーン構築」「調整プラットフォーム創設」はこれから

――G7サミットでは経済安全保障に関する特別な首脳声明が出された。これまでの懸念を表明するというところから、一緒に行動するというところに踏み込んできたのか。
明星大学 細川昌彦教授:
まだ踏み込めていないと思います。今回はサプライチェーンの原則で合意した。それは信頼性のあるパートナーと組むということです。

――信頼できるパートナーとサプライチェーンを構築していく対象は「重要鉱物」「半導体」「蓄電池」だとはっきり言っている。

明星大学 細川昌彦教授:
重要鉱物と蓄電池は繋がっていて、リチウム、コバルト、ニッケルを持っている資源国はグローバルサウス。中南米やアフリカのコンゴであったりするわけです。ところが、鉱物を採掘して精錬して加工するところの7、8割を中国が押さえている。
――中国が大半を握っている「採掘・精錬・加工」の部分を資源産出国あるいはG7とパートナー国がやるように変えていく。そういうことをやり始めると中国は対抗策を取ったり威圧したりするではないかという話になる。そこでG7の声明文に戻ると、威圧を受けたときには各国で調整しようと。
明星大学 細川昌彦教授:
一方的に経済制裁をするということを中国はずっとやってきています。1か国では対抗できないので、一緒になって共同対処しようというのがテーマです。共同対処といっても二つあって、やられた国をみんなで協力して救済しようというのが一つ。二つ目は、やり返すという対抗措置を1か国がやるのではなく共同歩調でやりましょうと。
ところが、今後G7で協議する場を作ろうというだけなのです。議長国は日本なのですが、対抗措置を一緒になってやろうと呼びかける場はあっても、肝心の日本が対抗措置を持っていないのです。プラットフォームを作って器だけに終わりかねないということを危惧しています。
――経済安保の分野でも、軍事安全保障の分野で言うような敵基地攻撃能力あるいは反撃能力のようなものを持たないといけないということか。
明星大学 細川昌彦教授:
抑止力です。抑止力を持っていることで、相手の標的になるのを避けていくということが大事です。
――日本は競争力も落ちてきて、経済安保が中心になってくる。
明星大学 細川昌彦教授:
今までは関税を引き下げて自由貿易でという流れでしたが、今大事なのは信頼できる相手国かどうかです。信頼の基準をどう作っていくかはこれからの課題ではありますが、経済パートナーを広げていく一歩が今始まりつつあるということだと思います。
――日本が優位なポジションに行くためには、キーになる技術や人材を持つことは必要だ。
明星大学 細川昌彦教授:
サプライチェーンの中の不可欠な存在でないとほかの国からお声がかからないわけです。技術は磨いていかないと陳腐化します。必ずそういう技術は他の国が追いついてくるわけです。カギになる技術を見定めて、その技術を磨く。官民がお互いにコミュニケーションをとっていないと、その見定めもできないと思います。
(BS-TBS『Bizスクエア』 6月3日放送より)