1989年、中国で民主化を求める学生らを軍が弾圧し、多くの人が亡くなった「天安門事件」。当時、運動に参加した人たちは今の中国をどう見ているのでしょうか。学生リーダーの1人、ウアルカイシさん(55)が語る中国の今、そして未来とは。
元学生リーダーが語る「中国の今と未来」
Q.習近平国家主席が去年、3選されましたが、今の中国をどう見ていますか?
『天安門事件』元学生リーダー ウアルカイシさん:
中国共産党は、明らかに決めたのです。中国を閉鎖的で、より権威主義的で、北朝鮮のように国民を抑圧する、そういう方向に持っていくことを。これは、習近平国家主席個人との考えや価値観と非常に密接な関係があると思います。
もちろん、中国の人々にとっては非常に悪い方向です。世界は、中国共産党の本質、習近平政権の本質をより明確に認識するようになりました。日本がそうした方向性をいち早く察知し、価値観を共有する国々との連携を強めるべきだと決断し、中国に対抗する連合を構築したことに感謝します。安倍元首相が世界に向けて発した中国に対する警告が、今後ますます現実味を帯びてくるのではと心配しています。これは、中国人の不幸であり、世界への挑戦です。
Q.習近平政権の何が問題なのでしょう?
ウアルカイシさん:
天安門事件から30年余りが過ぎましたが、中国政府は基本的に開放に向かわないという決断をしてきました。国際社会が従うべき共通の規範に向かうこともなく、むしろ閉鎖的で、反対勢力や反対意見を抑圧する方向に向かっています。
このような道は30年以上続いてきたのですが、習近平氏はこのような権威主義的な抑圧をさらに極端なものにしてしまいました。かつての中国共産党が一党独裁であったとすれば、今は個人独裁になっている。
Q.去年中国では「白紙運動」が起きました。しかし天安門事件の時のような広がりは起きず数日で終わってしまいました。その違いはなんだったのでしょう?
ウアルカイシさん:
あなたは、すぐに消えてしまった、といいますが、私に言わせれば何十年かぶりに再びこのような運動が起きるのを見たということです。すぐにまた、同じようなことが起きるかはわかりません。しかし、中国共産党への挑戦が無くなったと解釈するのは必ずしも正しくありません。中国共産党への挑戦は、今後ますます強くなっていくと思います。国際社会が中国の正体を理解したとき、中国共産党はこれまでのように経済発展という夢を見せることで、国民に将来の希望や、これからも幸せや豊かさを追求できると思わせることができなくなるのではないでしょうか。新しい冷戦が形成された場合、中国はここ数十年の高度成長を継続できなくなるでしょう。なにより、すべての中国人の言論の自由や政治の自由を奪いながら、経済発展の夢を満たし続けることは難しいと思います。中国国内では共産党に対する挑戦が生まれ、どんどん大きくなっていくと思います。