2022年に13人の記者が殺害 背景に何が?

アメリカの人権団体CPJ=ジャーナリスト保護委員会は2022年、メキシコでロペス氏を含む13人の記者が殺害されたと発表した。メキシコでは過去最悪となった。戦争が続くウクライナを除けば、メキシコは記者にとって「世界で最も危険な国」となる。今年も、少なくとも4人が殺害されている。

2022年5月、 メキシコシティでは 相次ぐ記者の殺害に、抗議デモが行われた。

「政府はジャーナリストの殺害を解明しろ!」

萩原豊記者
「このデモが始まる直前にも2人の女性ジャーナリストが殺害されたという情報が入ってきました。参加者は、これ以上殺すなと声を挙げています」

私たちが取材で入った、わずか1週間足らずの間に3人の記者が殺害されるという異常事態。

国際人権団体「アーティクル19」保護責任者 ペドロ・カルデナス氏
「メキシコでは2000年から153人以上のジャーナリストが殺害されています。とても深刻な状況です。ジャーナリズムに沈黙を強いるための暴力です」

1年間に664件の記者への暴力や脅迫が報告されたという。これも「氷山の一角」と見られている。国際人権団体が特に問題視しているのが、大統領のメディアに対する姿勢だ。

国際人権団体「アーティクル19」保護責任者 ペドロ・カルデナス氏
「記者が政府を批判すると、今の政権は、その記者を悪者に仕立てます。大統領本人が記者へのヘイトや暴力を正当化する発言をしているのです」

ロペス・オブラドール大統領は、定例会見で、政権に批判的な記事を頻繁に取り上げ、非難している。

メキシコ ロペスオブラドール大統領
「報道の名のもとに、誹謗中傷が数多くなされている」

「報道の自由は重要」と発言する一方で週に1回、会見の中に「ウソをつく人は誰だ」というコーナーを設け、記者を批判するのだ。

コーナー責任者
「数少ないまともな例外を除けば、マスコミのSNSを通じたウソの記事の拡散は、ハラスメント、脅迫、侮辱、誹謗中傷であり、暴力の扇動ですらあります」

私たちが取材した多くの記者たちが、「大統領の発言による影響」を問題視していた。

新聞記者 ソレダー・マルティネス氏
「記者に対するヘイトが大統領から全国に派生していると言っても過言ではないでしょう。州や市の全てのメディアに影響しています。全ての記者が危険な状態にあります」

国際人権団体「アーティクル19」によると、ロペスオブラドール大統領の任期前半の3年間、メディアに対する暴力や脅迫は前政権の同時期と比較して約85%も増加したという。

国際社会からも大統領の責任を問う声が上がる。

欧州議会の決議
・大統領が『会見で大衆受けする表現で記者らを中傷している』と非難
・『民主主義社会でジャーナリストが果たす重要な役割を公的に強調する』よう求める