陸上競技の第107回日本選手権が6月1~4日、大阪市ヤンマースタジアム長居で行われる。男子短距離の若手で注目したいのが、5月3日の静岡国際男子200mで20秒10(+2.6)をマークして優勝した鵜澤飛羽(20、筑波大3年)である。追い風が2.0mを超えたため参考記録になったが、8月の世界陸上ブダペスト参加標準記録の20秒16を上回るタイムで走った。200mは大会初日(6月1日)に予選、2日目に決勝が行われる。台風の目となる鵜澤の特徴とは?
「左脚が8割に戻った」ことが快走の要因
静岡国際で鵜澤が出した20秒10(+2.6)は周りの200m選手たちに衝撃を与えた。
2位(20秒32)の上山は「久しぶりに20秒1台を見ました。負けていられません」と刺激を受けた。昨年の世界陸上オレゴンでは予選で20秒26(+1.0)と、大舞台で自己新をマークし準決勝に進んだ選手である。
5位(20秒45)の飯塚は「(ゴール脇のタイマーが止まった)20秒11は僕の自己記録ですよ。次は負けません」と鵜澤の力を認めた。飯塚もオレゴンでは準決勝に進んでいる。セミファイナリストの2人がそろって20秒10に衝撃を受け、自身を発奮させる材料としていた。
鵜澤自身は静岡国際の走りを次のように振り返った。
「前半はそんなに突っ込まず、いつものように後半で行けるように走りました。それなりに前半も上手く走れて、カーブを抜けた時点では前の方にいたので、そのままいつも通りに伸びてくれたら勝てると思った。しかし150mくらいで力みが出てしまいました。左ハムをケガしてから2年近く経ちますが、まだ(完全には)使えていません」
大学1年5月の関東インカレ100m決勝で、重度の肉離れをしてしまった。追い風5.5mのレースで10秒07の2位、鈴木涼太(城西大4年。現スズキ)や、東京五輪4×100 mR補欠になるデーデー・ブルーノ(東海大4年。現セイコー)らと競り合ったときだ。
「初めての関東インカレで頑張りすぎました」。車いす生活を余儀なくされ、練習に戻るまで「4、5カ月かかった」という。
大学2年時の昨年は9月の日本インカレで優勝(20秒54・+1.6)した。自己新だったが、まだ左脚の使い方が不十分だった。
筑波大の谷川聡監督(短距離コーチ)は、「静岡は左脚が8割治り、そこが使えるようになったことが快走できた一番の要因」だという。谷川監督は「日本選手権で左脚が8割5分、今シーズン中に10割使えるようになっていれば」と期待する。