日本ではまだ認められていない「同性婚」。お隣、台湾では4年前の2019年に「同性婚」が東アジアで初めて認められ、1万組以上のカップルが誕生しています。同性婚を認めた台湾の社会はどのように変わったのか?日本と台湾で、「国際同性婚」を果たしたカップルに話を聞きました。
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同性婚は「幸せな人が増えるだけ」日本でも早く認めてほしい

台湾で暮らす日本人、有吉英三郎(ありよし・えいざぶろう)さん(43)。盧盈任(ろ・えいじん)さん(35)と2022年、結婚しました。

2019年に同性婚が認められた台湾ですが、国際結婚カップルである有吉さん、盧さんの婚姻届は不受理。国際結婚の場合、出身国(有吉さんの場合は日本)が同性婚を認めていることが条件になっていたからです。2人は訴訟を起こし、勝訴。晴れて2022年、結婚が認められました。

【左】有吉英三郎さん、【右】盧盈任さん

ーーなぜ、台湾で同性婚が認められたのでしょうか?

有吉さん:
ひとことで言うと、台湾の司法がマイノリティの人権を守る気概を貫いたっていうことだと思うんですね。台湾は1986年にある男性の方が同性愛者であることをカミングアウトして、活動を始めて、それから少しずつ団体が声を上げるようになって、もう30年以上なんですよ。
天から降ってきたように同性婚が成立したわけではなくて、そこには汗であったり、血であったり、命であったりをいろんな人が懸けて努力してきた。最後はその成果だと思います。

ーー日本ではまだ同性婚の法律どころか、まだ手前の議論がようやく始まったばかりですが日本の現状は台湾から見てどうでしょう?

有吉さん:
正直に言うと、とても悲しい。私は台湾に住んで実際に同性婚を経験したので、本当に同性婚って幸せな人が増えるだけで利用しない人には何の影響もなくて、いいことしかないのに何で躊躇してるんだろう?やっぱりもっと勇気が必要かもしれないけど、ちゃんと勇気を持って、認めてほしい。

ーー岸田総理が「同性婚を認めると世の中は変わってしまう」と言いましたが、そう思いますか?

有吉さん:
毎朝夫とランニングをするんですが、おじいさん、おばあさん、おじさん、おばさん、若者たちが走ったり歩いたりしているのを見た時にこの人たちは4年前も同じようにしていたわけで、そして、この人たちは私たちが同性婚していることをおそらく知らないだろうし、知っていたとしても、本当に何の影響もない、関係がないことだから、やっぱり社会は変わるはずないっていうのが一つ。

もう一つは朝、自宅の6階に上がって、洗濯をしながら町並みを眺めるんですが、鉄道が通っていたり、鳥が飛んでいたり、出勤のためにバイクに乗っている人たちがいて、「これが同性婚がある社会なんだよな」と。これって4年前、それ以前から確実にあって、本当に何も変わらないので、同性婚が成立しても、社会が変わってしまうことは一切ないんです。

盧さん:
政府とか政治家は制度を変えることについて、悪い変化や悪い影響ばかり考えて、心配になるのはもちろんわかります。社会が変わるといっても、同性婚を希望する人が結婚するだけで、いい変化しかないんです。「いつか自分の愛する人と結婚できるんだ」という希望を持てる、いい変化しかないんだと思います。

ーー結婚できて嬉しかったですか?

有吉さん:
もちろんですね。結婚って日本にいる時から「できたらいいな」って思いはずっとありながら、でも考えないように、なぜなら自分は同性愛者だからと。女性とは法律上は結婚できるけど、それは正直言うと苦しいものになってしまう。
だから、男性と結婚できない以上、結婚っていうのは自分にはできない。話題としてもできれば避けたいものだったのが台湾に来て実現して、本当に穏やかな平和な気持ちで毎日過ごせています。

盧さん:
すごく嬉しいです。法的に認められることで、自分がやっていることが国や社会に受け入れられている、変なことではないんだという実感が持てるので、結婚できてよかったと思っています。