同性婚を認めることは「命の問題」

ーー結婚はご家族も喜んでくださいましたか?
有吉さん:
そうですね。私が22歳の時に、父母と2人の姉にカミングアウトをしていまして。とても感謝しているのは、その時、母が「人を好きになるって素晴らしい感情だから、それは女性でも男性でも変わらないよ」って言ってくれたこと。
もうひとつ「これであなたは自殺しないわね」と言ってくれたんですね。
やっぱり母にとって息子の存在は、勉強頑張っていたり、スポーツやっていたりは見えたけど、恋愛の部分を見たことがなかったから、カミングアウトして当時付き合っている男性がいるって言った時に「あ、これであなたはもう自殺しない」って言ってくれたのがとても印象に残っていて。
もしかしたらちょっと大げさじゃないかって感じるかもしれない。なんでLGBTのことで自殺するんだろうって。でも、当事者にとってはすごく心の苦しさを伴うもので、法律がない関係で、国からも守られてないっていう気持ちだったり、日本人の場合は80%の同性愛者、LGBTの方がカミングアウトできていない状況ですので、誰にも言えないで、この感情を抱えるって本当に苦しいので、自殺未遂であったりとか、実際に自殺をしてしまう人は多いので、やっぱり本当に命の問題だと思います。

ーーそういう状況を変えるためにも、日本は早く同性婚を法制化すべきだと思いますか?
有吉さん:
もちろんです。法律があることで守られているってのはありますので。本当にいち早く、30年後じゃダメなので、本当にいち早く作ってほしいです。
ーー日本ではようやく性的マイノリティへの理解を促す法案が提出されました。法案は、保守派に配慮し、「差別は許されない」という文言が「不当な差別はあってはならない」に修正されました。
有吉さん:
今回の内容でも「不当な差別があってはならない」っていう言葉に、私たちはとても憤りを感じていて、差別はすべて不当なものなのにどうして「不当」っていう言葉をつける必要があるのか。
どんどん後退させている気がするので、一歩進んだっていう気持ちより、悲しい気持ちになることが多いですね。
同性婚を認めるっていうのは、それを利用する人が幸せになれるっていう大きな円があるとして、ただ、その周りには「心配なことが起きるかもしれない」という小さい円がいくつもあるのかもしれないのですが、現状の日本は、おそらくその小さい円にすごく注目していて、それを全部処理しないと大きい円を認めることはできないよねっていうふうにやっている気がするんですね。
でも、その小さい円は本当にいくつもいくつもあるので考えているうちに、本来あるはずの大きい円がどんどんしぼんでしまって。大きい円、幸せになれるんだっていう部分だけ注目すればいいのになって思いますので、本当に幸せな人が増える。社会は変わらないので、同性婚を認めてくださいっていうふうに強く願っています。
盧さん:
同性婚を認めることは、社会に大きな変化が起こるわけではなく、むしろ悲劇を減らすことだということだけは、言えると思います。
ーー最後に今、あなたたちは幸せですか?
有吉さん:
はい。とても幸せです。同性婚ができて、大好きな台湾に住むことができて、夫に出会えて、温かい家族と一緒に住むことができて。本当に幸せに暮らしています。
盧さん:
今、とても幸せだと思います。時々、高校時代のことを思い出すのですが、同級生に好きな男の子がいたのですが、当時はゲイであることに不安があり、自分が普通かどうか、疑うことが多かったのです。
当時は未来が描けずに、30歳とか40歳で死んだ方がいいんじゃないかと思うこともあったくらいで、未来が想像できない。つまり、女の子と結婚できないから、ずっと独身かもしれないし、好きな人を見つけて一緒に暮らすことも、結婚することもできないんじゃないかと想像するような感じでした。 でも、今は彼と一緒に暮らして、一緒に走ったり、ご飯を食べたりして、楽しく生活できているので、今はすごく幸せだと思いますね。