ウクライナへの侵攻から間もなく3か月、ロシア軍は投入した地上戦力の3分の1を失ったとの分析もある。大量の兵力損失は、今後の戦い方をどう変えるのか。また戦争の終結は早まるのか。揺れるロシア軍内部の動き、制裁を受ける軍需産業の実態を踏まえながら、懸念される今後の展開を読み解いた。果たして戦争を終わらせることは出来るのか―。

■プーチン氏と軍部の関係「相当ぐらついている」


ロシア軍の制服組のトップ・ゲラシモフ参謀総長の消息が途絶えた。5月9日の対独戦勝記念日に姿を見せなかったのだ。米国務省によると4月末にはウクライナ東部イジュ―ムを視察し、その際に右足を負傷。その後、5月4日にはロシア国防総省の会議に出席していると、ロシアのメディアが伝えている。今、軍部で何が起きているのか。

東京大学先端科学技術研究所 小泉 悠 専任講師
「戦勝記念日は軍が主役のイベントなので参謀総長が来るべきもの。ゲラシモフは就任10年になるが、これまで戦勝記念日に来なかったことはないのではないか。可能性は幾つかあると思うが、今回の戦争を巡って相当にプーチンの信頼を失っているという話がある。ゲラシモフは事実上更迭されているとの噂話もある。最後のチャンスを貰えるかどうかプーチンと折衝中だと。現場の司令官クラスも罷免されるだけでなく、捕まっているのではないかという。参謀本部の中でも何人か罷免されているという話もある。軍とプーチンの関係は相当にぐらついているというのは間違いないと思う」

こうした中、16日にロシアで有名な軍事評論家のホダリョノク元大佐が国営テレビに出演し、こんな発言をしたことが物議をかもしている。

「ロシアにとって戦況は明らかに悪化している。軍事的、政治的状況の最大の問題点は、私たちは完全に孤立していて、全世界が私たちに反対していることだ」

プロパガンダ化した国営テレビで、プーチン氏に不利に聞こえるような戦況を語ることは珍しい。一体どんな意図があるのだろうか。

東京大学先端科学技術研究所 小泉 悠 専任講師
「ホダリョノク氏も随分勇気がある発言をしたと思う。こういう発言を許したのが、ホダリョノク氏の独走だったのか、それとも仕込みで何らかの理由でこういう発言をさせているのかは気になるところだ。実は他にも何人か軍人や専門家は、『動員をかけないと勝てませんよ』とか語り始めている。戦況が厳しいということを専門家の口を借りて喋り始めている、或いは専門家がそういう発言をすることを妨げなくなってきている。では、言わせた末に何処に持っていきたいのか…もはや何々をしてもやむを得ない、という方向に世論を持って行きたいのだろう。その“何々”が何なのかということがこれからの焦点だと思う」