予選で自己2番目の10秒08。決勝は脚が攣りそうな状態で走っていた坂井

日本人トップ3位の坂井選手

日本勢トップの3位には坂井隆一郎が10秒10で入った。カーリーには圧倒されたが、課題だった後半の減速を最小限にとどめた。2位のブラウニングとは同タイム(厳密には0.005秒差)、4位の小池の追い上げから0.01秒差で逃げ切った。このメンバーで終盤まで競り合う展開は、坂井にとっては進歩だった。

注目されたのはカーリーとのタイム差だった。オレゴンの準決勝2組を一緒に走り、1位通過したカーリーは10秒02(+0.1)だったのに対し、6位で通過できなかった坂井は10秒23。0.21秒差があった。それを「少しでも縮めたい」とGGPに臨んだが、結果は9秒91と10秒10。2人の差は0.19秒になった。

オレゴン準決勝は同じ日に決勝も行われるので、カーリーも最後まで全力を出し切れなかった可能性が高い。本来の力を出せば坂井との差はもう少し大きかったかもしれない。

それに対してGGPは、カーリーも現時点の全力を出した。さらに坂井自身が「右脚のふくらはぎが攣(つ)りそうな状態」で走っていた。その状態でも0.02秒、差を縮めていた。「カーリー選手のことより自分の脚のことでいっぱい、いっぱいでした。それでも去年のオレゴンと同じくらいの差。しっかり走ればもうちょっと差は縮まったんじゃないかな、と思っています」。

それは、9秒台への手応えも大きくなったことを意味する。
「予選は追い風でしたが(自身2番目の)10秒08を出せましたし、風がそんなになかった決勝も10秒10でした。コンディションがそろえば(世界陸上ブダペスト標準記録の)10秒00や(日本人5人目の)9秒台は狙えます」。

6月4日の日本選手権は「自分の走りをしっかりして優勝を目指す」が、オレゴン7位入賞のサニブラウン・アブデル・ハキーム(24、タンブルウィードTC)と終盤まで競り合えば、9秒台が出るだろう。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)