男子走幅跳で初めて、8月の世界陸上ブダペストの参加標準記録突破者が現れた。ゴールデングランプリ(GGP)2023横浜が5月21日、今年は横浜市の日産スタジアムを舞台に15種目が行われた。男子走幅跳では23歳の吉田弘道(神崎陸協)が、8m26(+1.0)の日本歴代3位の大ジャンプを見せ、昨年の世界陸上金メダリストの王嘉男(26、中国)に4cm差で優勝した。世界陸上標準記録の8m25を1cm上回ったが、吉田は過去にも“1cm”超えをしてきたジャンパーだった。

試技を重ねる毎に跳躍がよくなり6回目に8m26

吉田の6回の試技内容は以下の通り。尻上がりに調子を上げていった。

【吉田の記録】
7m74(+1.1)
7m71(+1.4)
7m91(+0.7)
ファウル
8m11(+2.6)
8m26(+1.1)

「助走の組み立てが徐々に修正できていって、うまくなっていきました。 それが8mにつながっていったかな、と思います」

2週間前の木南記念は7m67(+0.6)で7位と、今大会より59cmも悪かった。

「本当にひどかったですね。スピードを出しているつもりでも出ていませんでしたし、体がすごく重いというか、硬かった。今日もアップ中は少し重くて大丈夫かな、という感覚でしたが、コーチと話して、自分の感覚とすり合わせながらアップと(動きづくりのための)ドリルを重ねていって、ようやく5本目、6本目でまとまりました」

吉田の8m26は城山正太郎(28、ゼンリン)の8m40(+1.5)の日本記録、橋岡優輝(24、富士通)の8m36(+0.6)に続く日本歴代3位である。橋岡が19年に8m32(+1.6)を跳ぶまで、森長正樹(日大、現日大コーチ)が92年にマークした8m25(+1.6)が27年間も日本記録だった。

「森長先生の8m25はずっと残っていた記録です。いつかは跳びたいと思っていましたが、まさかこのタイミングで跳べるとはまったく思っていませんでした。それに(歴代1、2位)の2人はオリンピックも世界陸上も経験されているのに対し、僕はたった1試合跳んだだけです」

吉田は今回、森長の元日本記録でありブダペストの標準記録である8m25を1cm上回ったが、過去にも1cm上回ったことがあった。2年前に7月の兵庫県選手権で8m14(+1.7)を跳び、朝原宣治(同志社大、現大阪ガス副部長)が持っていた8m13(+0.7)の関西学生記録、兵庫県記録を1cm更新した。“持っている”選手である。

今後も1cmの違いで何かの記録保持者になったり、重要な試合で勝敗を左右したりすることがあるかもしれない。