「SDGsウィーク」、今回のテーマは「海の豊かさを守ろう」です。アメリカ・ニューヨークでは、牡蠣を食べた後に大量に出る貝殻を使ったあるプロジェクトが進んでいます。

世界中の食材が集まるアメリカ・ニューヨーク。こちら、マンハッタンにある人気シーフードレストランで人々がおいしそうに食べているのは牡蠣です。

しかし、そこにはある問題が…食べたあとに残る牡蠣の殻です。

シーフードレストラン「Lobster Place」 総料理長
「たくさんの牡蠣殻が残るんですが、環境のためにはその殻が必要なんです」

レストランの裏手に設置された一見ごみ箱のようなもの。実はこれ、貝殻専用の回収ボックスなんです。

ニューヨーク市内の飲食店などから集めた牡蠣など、貝類の殻は週におよそ4トンにのぼります。その貝殻の行き先は、自由の女神もほど近いマンハッタン南端の島です。

記者
「ニューヨーク市で集められた牡蠣などの殻。山のように積んであります」

貝殻は1年間天日にさらし、洗浄して海へ戻すといいます。

この一帯は、かつて「オイスターアイランド=牡蠣の島」と呼ばれ、その産地として知られていましたが、水質の悪化で牡蠣がほとんどとれなくなってしまいました。

そこで、多様な生態系を取り戻すため、NPOと地元の学校が立ち上げたのが「ビリオン・オイスター・プロジェクト」。ニューヨークの海に10億の牡蠣をよみがえらせようという取り組みです。

ビリオン・オイスター・プロジェクト アシュリーさん
「私たちはボランティアで牡蠣の殻を洗浄しています。きれいな状態で育つようにするためです」

まずは、集めた貝殻をケージなどに入れて海に投入し、牡蠣などの稚貝が宿りやすくするために人工の岩礁をつくります。そこで牡蠣が育つとさらに良いことが。

成熟した1匹の牡蠣には1日で200リットル弱の水をろ過する働きがあるといわれていて、牡蠣が増えると海がきれいになるのです。

ビリオン・オイスター・プロジェクト アシュリーさん
「現時点で年間1億匹を増やせます。2035年までに目標を達成したいです。若い人達にもっと参加してもらうことも大切です」

これまでにレストランなど100以上の団体もこの活動に賛同していて、9年前に始まったプロジェクトには、のべ1万人以上の地元学生も参加しています。

参加者
「今回が初めてです」
「素晴らしいよ」
「このような活動でかつての環境を復元しようとするのは素晴らしいです」

ニューヨークで大量消費される牡蠣、その貝殻をごみとして捨てるのではなく、こうして再利用することで水質が改善され、今ではタツノオトシゴやカニの姿も見られるようになりました。

次世代へとつなぐ持続的な取り組みの広がりが海の再生へのカギを握っています。