“合同結婚式は愛と犠牲の象徴。自分を捨てることが必要。財産や職業、容姿を問うてはならない”
合同結婚式でかつてと現在、最も変わった点は結婚相手の選び方だ。かつては故・文鮮明教祖の一存で相手が決まり、結婚式当日どんな相手か知るというものだった。現在は教団のマッチングウェブサイトを利用しそれぞれの親が相手を選ぶという。選択の自由があるようだが…。

『全国霊感商法対策弁護会』 阿部克臣 弁護士
「マッチングサイトがあり、教会にマッチングサポーターがいて、相談に乗ってくれて、断ることもできると言ってるんですが、教義の本質として“相手は神が決める”“好きな相手との結婚を望むことは神への冒涜”とある・・・。韓鶴子総裁の自叙伝にも“合同結婚式は愛と犠牲の象徴。自分を捨てることが必要。財産や職業、容姿を問うてはならない”(中略)さらに教義上離婚の自由がない。良い人だったらいいが、そうでなかったら…」
本質は今も昔も変わっていないと阿部弁護士は言う。果たして合同結婚式での結婚、その現実はどのようなものなのか、二人の女性を取材した。
ひとりはソウルから車で5時間半、寂れた集落の一角。今は信仰を捨てた日本人女性が住んでいる。彼女は20年ほど前に合同結婚式で韓国人男性と夫婦になり韓国に渡ってきた。
しかし、繰り返される献金要求に嫌気がさして6年前に信仰を止めた。

元信者 青木さん(仮名)
「うちの村だけでも日本人妻は7~8人いた。私もそうでしたがみんな相手のことを好きじゃないのに信仰で、もう最後まで悩みながら行くわけです。(今年は550人の日本人が参加)少ないかも…。減っているのはいいこと。やっぱり被害が…。(中略)宮殿を建てるとか言ってお金集めもありましたし、親を騙してでもお金を取って献金するのが良しとされているっていうのが疑問に思いました」
現在の生活ぶりはかなり厳しい。が、青木さんは教団を抜けた後も5人の子どもたちの存在によって韓国を離れはしなかった。だが、もう1人インタビューに応じてくれた女性は悲惨な経験の末に単身韓国を離れるほかなかったという。
「(夫も教会に)日本人女性と結婚すれば生活費を出さなくていいとか言われてた」

その女性は別れた夫が抱き寄せる5か月の娘の写真を大事そうに持っていた。
現在、香川県に住む統一教会元信者の女性。韓国・ソウルスタジアムに実に36万組を集めた1995年の合同結婚式に参加した。当時のルールにのっとり、文鮮明教祖が選んだ相手と当日初めて会うわけだが、事前に教団から送られてきた韓国人男性の経歴を見て愕然としたという。
元信者 加藤さん(仮名)
「信仰歴0年って…、教会員じゃないじゃない・・・。学歴は小学校…。最終学歴、小学校って…。」
相手を変えられないか教団に打診すると、“今より条件が悪くなる”と言われた。更に結婚式の後、韓国に渡るのをためらっていると“災いが起きる”と脅された。仕方なく韓国に嫁いだ加藤さんを待っていたのは想像を絶する過酷な毎日だった…。
未明に起床しての農作業などまだいい方だった。親戚まで同居する片田舎の貧しい農家。便所は母屋から離れた小屋だった。
元信者 加藤さん(仮名)
「トイレ行くのが大変なんで、みんなが室内に置いたおまるで済ませちゃう。金属の重たいおまる。一晩中みんながする糞尿で目いっぱいタプタプに入ってる。それをトイレに捨てに行くのが私の役割。途中の道が良くないので大変なんです。家族が多いので…」
夫は夫で騙されていたという。統一教会の信者でもないのに教団から合同結婚式に誘われた。
嫁不足の貧しい農村で結婚など諦めていたところに降って湧いたような話だったのだろう。

元信者 加藤さん(仮名)
「日本人女性と結婚すれば生活費を出さなくていいとか、お金の面で都合がいいとか言われてたみたいなんです。でも実際私はそうじゃなかったので、お姑さんも統一教会に騙されたって感じだったみたいです。(中略~姑はつらくあたった)真冬でも洗い物は水で…。お風呂に入ってるのがバレたらボイラー切られちゃう。もう臨月まで水風呂の状態。(出産後も過酷さは変わらず)私も限界。娘殺して、自分も死のうとずっと思った。でも両方が生きられる方法を探した。考えあぐねて、子供をあきらめて日本に帰れば、とりあえず両方生きてるんじゃないかって…」
娘を遺してひとり帰国した加藤さん。あれから24年、娘には会っていない。加藤さんは合同結婚式を、こう振り返る。
元信者 加藤さん(仮名)
「とにかく36万双(組)作らなきゃいけない、1組も欠けてはいけないって、教会が言ってた。そんなに人数が重要なんだ。そこにばっかり神経使って、救いはどうなったんだ。どこにも救いはなかったですよ」
今年結ばれた550人の日本人は、これからどんな生活を送るのだろうか…。
(BS-TBS 『報道1930』 5月8日放送より)