入管施設に収容された外国人のうち、一時的に拘束を解かれるのが「仮放免」です。しかしその結果、「極度の貧困」状態に陥る人が少なくありません。日本で生活が成り立たず、祖国にも帰れないというある男性を取材しました。

■「僕は自分で何もできない。モノみたい。人じゃない。人間じゃない・・・」


狭いキッチンで料理の腕を振るうのはチリ出身のクラウディオ・ペニャさん(61)。友人に振る舞う料理を用意しています。

ペニャさん:
狭い…。前の店、昔働いていた時は広かった。


国際的な料理コンテストで優勝経験を持つ一流の料理人です。これまで26年間日本で暮らし、チリ料理のレストランなどで働いてきましたが、今は働くこと自体許されていません。彼に一体何が起きたのでしょうか。

ペニャさん:
成田空港から(直接店に)来ました。その時の社長さんはここに車を停めました。

ペニャさんは1996年、技能ビザで来日したその日からレストランの厨房に立っていました。

ペニャさん:
その時お店はすごく混んでいた。「クラウディオ〇〇作って」「〇〇作ってください」と。「なになに?」という感じ。でも「はい」と言って仕事した。楽しかった、楽しかった。本当に楽しかった。



全てが一変したのは2011年。

保証人が突然、日本を出て海外へ。ペニャさんは在留資格を失い、入管施設に収容されてしまったのです。

これはペニャさんが収容中に書いた絵です。
左は「日本に来たばかりの自分」。料理人として自信に満ち溢れていた頃の自分。

そして右は「施設に収容され痩せ細った自分」の姿です。

ペニャさん:
これは入管の中の僕のイメージ。心痛い…。

長期収容で心を蝕まれたというペニャさんですが、2020年5月、一時的に収容を解かれる“仮放免”となります。

仮放免は病気などの特別な事情がある収容者に許されてきましたが、2020年からは収容施設でのコロナ感染を抑えるため、積極的に行われるようになりました。

しかし、仮放免中は働くことが許されません。医療保険など社会保障も一切受けられません。住む場所も食べるものもない“極度の貧困”に陥る人が増えているのです。

ペニャさん:
家賃や携帯代などはボランティアさんや教会が支援してくれる。それが恥ずかしい。僕はプロのコックさんで仕事ができました。自分のお金を作りたい。僕は自分で何もできない。モノみたい。人じゃない。人間じゃない