娘・奈緒子さん「(自宅でも)安心感はありますね。つながってくださってるので。おかえりって感じ」

タツさん「ただいま」

患者を自宅などの生活の場へ戻す役割を担う病院は「地域包括ケア病棟」と呼ばれ、国はこの病棟に関して在宅復帰率を72.5%以上にするよう基準を定めている。これに対し、「おうちにかえろう病院」は復帰率93%を達成。スタッフたちの思いは…

看護師 風間碧さん「『家族に協力してもらおう』『ここはサービスで整えていこう』とか、本当に“おうちに帰るにはどうしたらいいか”というところを主軸に、困らないよう整えておうちに帰らせてあげるという思いが強いと思いますね」

作業療法士 松﨑さん「患者さん本人、家族も“本当の思いはどこにあるのか”というのを拾うのがすごく大変というか、初対面でそんなに大事なことは話せないと思うので、まず信頼関係をコミュニケーションで作って、その中で踏み込むタイミングを見計らいながら、お話を聞いていくということですね」

「レスパイト入院」で自宅で過ごすエネルギーをチャージ

この病院に何度も入院している患者がいる。
鈴木英夫さん(64)は左半身に麻痺があり、言葉を話すことができない。筆談でコミュニケーションを取っている。

医療スタッフ「かゆいとかは、大丈夫?」
鈴木さん(筆談)「かゆい、ときどき」

鈴木さんは、この病院に毎月1週間ほど「レスパイト入院」している。レスパイトとは“休息”という意味だ。本人だけではなく家族の休息という目的もある。

かつては印刷会社に勤め、週末には家族で登山やハイキングに出掛けるなど、充実した日々を送っていた鈴木さん。
しかし6年前に脳出血を起こし、体が不自由になり、妻・貴美子さんが自宅で介護を続けてきた。鈴木さんには食事や排せつのほか、頻繁に体の位置を変えるなどの介助も必要だ。

鈴木さんの妻・貴美子さん
「長時間、同じ姿勢でいると、体が固まってしまいますので体位変換。一番辛いのは、やはり夜間に本人が起きると私を必ず呼ぶんですね。それで私の睡眠がちょっと疎かになるというところですかね」

――これからも家がいいですか?
鈴木さん(筆談)
「いい、じゆうがある」

鈴木さんの在宅診療は、やまと診療所が担ってきた。主治医の石川医師は、睡眠不足で疲れ切っている貴美子さんの様子に気づき、レスパイト入院を薦めたという。

やまと診療所 石川元直 医師
「脳卒中後の場合は、年単位での病気との付き合いになってくるんですよね。奥さんとしてはずっとマラソンしているような気分になってしまうので、時々休息させてあげるということも大事で、レスパイト入院を提案しないと知らない人もいる」

2年前からレスパイト入院を繰り返してきた鈴木さん。入院中は専門的なリハビリを集中して受けられ、体調維持にも重要な時間になっている。

妻・貴美子さん「(夫が入院している間)自分も休養ができる、あと気分転換になるという面ですごく精神的にも肉体的にも助かっております」

――夜もぐっすりですか?
妻・貴美子さん
「そうですね、もう誰にも起こされないわ、という感じで寝ております」

――病院で過ごす時間はどうですか?
鈴木さん(筆談)
「楽しい、のんびりできる」

――奥さんにとって、どんな時間ですか?
鈴木さん(筆談)
「めしつくらなくていい、じぶんのことできる。リフレッシュ、またなかよくできる」

“ときどき入院、ほとんど在宅”
この病院は、自宅で過ごすためのエネルギーを蓄える場にもなっている。