
水野院長「病院の医療者が『もうこうなっちゃったから家は無理だよね』と思って、家に帰るという選択肢を提案しない。医療者側が“家が見えないから帰れない”ということも大きな要素だろうなと。我々は家で何が出来て何が難しいのかを実体験として知っている。そうすると、家が見えている医療者が病院をつくることによって思いを叶えられる人はもっともっと増えるんじゃないかと」
「家族に迷惑が…」患者・家族の“本当の思い”拾い 在宅復帰率は93%
自宅に戻るためリハビリを続けているタツさんだったが、足腰の痛みが取れず、思うように回復できずにいた。
病院側はこの状態でも医療や介護サービスを利用すれば、家での生活は十分可能だと判断していたが…
作業療法士 松﨑彩織さん
「『(タツさんは家族に)迷惑かけちゃったら』『もう死んじゃった方がいいんじゃないか。また別の病院に行くつもりだよ』とか仰ることもあったんですけど、本音がどこにあるのかを拾っていかないと、本人が本当に思っていることと、ずれていくことがあるので…」

娘と1対1では直接話しにくいこともあると思い、スタッフは娘の奈緒子さん同席のもと、タツさんの気持ちを聞くことにした。
神尾医師「どうして“お家”に帰るという気持ちがなくなったのかなってところをお聞きしたいなと思うんですけど」
タツさん「家族に迷惑がまたかかるかなと思って。そんなこと言ってられないけどね。奈緒子が受け入れてくれるならお家でもね。奈緒子はどう思うか…」
娘・奈緒子さん「やだ、なんか泣きそう…奈緒子は大丈夫ですよ。でも仕事もしてるからさ。がっつり本当はみたいんだけど」
タツ「奈緒子にみんないっちゃったら大変…」
娘・奈緒子さん「そんなことない、みんなに協力してもらうから大丈夫」
タツさん「相談しながら…お願いします」
この日以来、タツさんの気持ちは前向きに変化していく。スタッフとの会話でも、今まで聞けなかった本音が。

作業療法士 松﨑さん「タツさん、雪降っちゃいましたよ」
タツさん「雪降っても槍降っても帰るよ。具合悪くなってもうちでね」
そして迎えた退院の日。5か月ぶりに我が家に帰ってきた。
タツさんが入院中、病院は地域の介護事業所と連携し、ベッドの手配など自宅の環境を整えていた。
タツさん「ホッとしました」
病院から自宅に移ったタツさんの診療は、やまと診療所にバトンタッチされた。病院と診療所は一体、患者の情報は細かく共有されている。