ゴールデンウィークが始まった。コロナが5類に引き下げられることになり、これから夏に向けて海水浴にシュノーケリング、ダイビングなどマリンスポーツを再開する人も増えてくるだろう。しかし、そんなワクワクと同時に不安を抱えている人たちもいるという。それが、入れ歯ユーザーだ。いったいなぜか。

不幸はあるとき突然に・・・周りも気まずい「入れ歯すっぽん!」

昨今の60代、70代は元気だ。アクティブシニアとも言われ、年を取っても活動的で、生涯現役志向で、様々な趣味を楽しんでいる。沖縄でダイビングショップを経営する牧野純郎さんによると最近シニアダイバーが増えていると話す。しかし、あることがネックになって存分に趣味を謳歌できないでいる人が多いという。

Simply Blue 代表 牧野純郎さん
「海の中で、入れ歯を無くすトラブルを懸念される方が多いです。

実際に、マリンスポーツには入れ歯に関するアクシデントは多くて、ダイビング中に水面でマウスピースを外すときや、船酔いで船べりから吐くときに入れ歯も一緒に海に落としてしまうケースがあります」

入れ歯は水に沈む。海で外れた場合、沈んだ場所が特定できなかったり、深かったりすると、回収は難しいという。そうなってしまうと、せっかくの旅行も台無しだ。入れ歯なしでは食事も楽しめない。記念写真だってすぼんだ口元が気になってしまう。入れ歯ユーザーにとってマリンスポーツは、ワクワクでありながらドキドキもする活動なのだ。

なぜマリンスポーツでは入れ歯が外れてしまう危険があるのだろうか。入れ歯専門のコンフォート入れ歯クリニック 池田昭理事長は、入れ歯は構造上、ある条件下では“すっぽん”と取れてしまうのだと解説する。

コンフォート入れ歯クリニック 池田昭理事長
「総入れ歯は、入れ歯の周辺から空気や水が入り込むと簡単に外れます。原理は、顕微鏡に用いるスライドガラスとプレパラートが張りつく原理と一緒です。あるいはガラス同士が水を介在するとピッタリと張り付くのも一緒です。それらを水に沈めると外れますよね。

ですので、うがいなど口に水を含むと入れ歯が外れるのはもちろんですが、水泳の息継ぎで口に水が少し入り込むだけでも外れることもあります」

入れ歯ユーザーにもマリンスポーツを存分に楽しんでもらいたい…。池田医師は、入れ歯の専門家として何かできないかと考えるようになったという。そして、ある新型入れ歯の考案に至った。それは、“すっぽん”しても、“ぷかぷか”浮く入れ歯だ。

コンフォート入れ歯クリニック 池田昭理事長
「やわらかい素材で歯茎に負担をかけず、ハードな使用でも壊れにくいというのも目指しました。素材探しから、水に浮かぶ構造をソフトウェアで設計して、約3か月くらい。とうとう、すっぽんしてもぷかぷか浮く『マウスピース型の入れ歯』を完成させました」

これなら、マリンスポーツで落としても、沈んでどこに行ってしまったかわからないということはない。

現在はスポーツジムでの利用がメインだが、スキューバダイビング・マウスピース一体型入れ歯の試作品の製造に向けても動き始めているそうだ。

さらにこの「マウスピース型の入れ歯」は、ある「事情」に悩む方の支えにもなっているという。