4月28日から金沢21世紀美術館でベトナムを代表する画家の作品展が始まります。この作品展の開催にかける想いや見どころについて取材しました。

4月27日、金沢21世紀美術館では、展示に向けた作品の設営作業が行われていました。ベトナムを代表する絹絵画家、グエン・ファン・チャンさんの作品です。

輸送中に作品に変化が起きてないか、コンディションチェック

輸送中に絵画に変化がなかったか、細かくチェックする絵画保存修復家の岩井希久子さん。岩井さんは、ファン・チャンさんの長女から所有する作品の修復を依頼されていました。

岩井希久子さんとグエット・トゥさん

絵画保存修復家 岩井希久子さん
「グエン・ファン・チャンさんは、日常の何気ない幸せな生活や農民の働く姿とかを描いていますが、空気の流れ、時の一瞬を表現するところが魅力です」

絵画保存修復家 岩井希久子さん

グエン・ファン・チャンさん。
1892年生まれで、ベトナム近代絹絵を確立させた画家です。

グエン・ファン・チャンさん(1892‐1984)

精密なタッチで絹地に水彩で描き、何度も水洗いしては、また描画を繰り返す。
色を染め付ける独自の表現技法で、作品は高く評価されています。しかし、残された多くの作品は、高温多湿な土地柄で戦時中だったということもあり、保存状態が極めて悪いものばかりでした。

高温多湿の厳しい環境の中、傷んでしまった作品
修復前の「香炉の火煙」

「香炉の火煙」。

線香のけむりが風にたなびく様子を描いたこの作品は、岩井さんが1年を要して修復したもので、今回、初公開となります。

修復後の「香炉の火煙」

絵画保存修復家 岩井希久子さん
「グエン・ファン・チャンさんの作品からは平和を願う気持ちが伝わってきます。そういう思いを未来につないでいきたいし、残すべきだと思っています。」

今回展示される作品は16点。

会場では修復作業の様子も紹介される他、文化芸術を保護、支援する県内の文化財団の活動、「保存修復プロジェクト」の軌跡も見ることができます。

三谷文化芸術保護情報発信事業財団学芸員 益田ひかるさん
「グエン・ファン・チャンさんの絵画を次世代にどうやってつないでいくかに奮闘したプロジェクトとその軌跡を見てほしいです。会場に来てグエン・ファン・チャンさんのメッセージを感じ取ってほしいです。」

グエン・ファン・チャンさん

時中であっても強い信念で日常を描き続け、平和への思いを表現したグエン・ファン・チャンさん。またその意思を絵画保存修復の技術で構成に伝えようとするプロジェクトの思いを会場で感じてください。

「ベトナム絹絵画家グエン・ファン・チャン愛を語る人」は、金沢21世紀美術館で5月19日まで開かれています。
※5月14日(日)は臨時休館日