戦闘が激しかったらどうなっていた?「自衛隊法をおさらい」

―――今回はハルツームからポートスーダンまで自衛隊の護衛なしに無事移動できたのですが、もし現地の戦闘が激しくて、護衛が必要だった場合に、自衛隊はハルツームに乗り込んで、日本人を安全な場所に輸送したり、現地で保護したりというのはできるんでしょうか?自衛隊法の規定をみましょう。

―――在外邦人等の「輸送」と、警護や救出もできるという「保護措置」、この二つの規定があるんですが、保護措置はかなり条件が厳しくて、その国の当局が安全秩序を維持していて、戦闘行為がないという条件が含まれるんです。黒井さんは今回の状況を見て「輸送の前提であれば可能だが、保護なら難しいのでは」ということですね。

黒井文太郎氏: 「保護」の場合は、戦闘が前提ですからなかなか難しい。憲法に「海外で武力行使ができない」という規定があるので、それの兼ね合いです。けれど「輸送」ということであれば、戦闘が前提でないということですから、例えばアフガニスタンで飛行機を飛ばしたってことがありましたが、あのときは「安全に輸送できる」という条件がついていたんです。

その後、自衛隊法が改正されて、「安全」というのが外れて、「予想される危険及びこれを避けるための方策を講ずることができれば輸送できる」というふうに変わりましたので、戦闘を前提としない、ガード・警護をしながらの輸送は可能になりました。

―――今回は被害がないという報告が伝わってきていますが。

 今回ぐらいであれば、おそらく自衛隊が(輸送のため)ハルツームに入っていくことは可能だったとは思います。たまたま国連のミッションがあったので、そちらでいけるだろうという判断だと思うんです。

 ただ将来的に、もっとひどいような状況になったとき、例えば日本人が囚われて救出が必要になる。それも無政府状態というようなこともあり得ないわけじゃないので、その場合は、なかなか自衛隊で動けないということになります。